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日本の次世代クライマーたちが集結。
北陸から世界へ!『JOC』密着レポート。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byIchiro Tsugane
posted2019/09/30 11:00
10代の活躍が目覚ましいクライミング。
この大会は年代別に、ユースC(2006・2007年生まれ)、ユースB(2004・2005年生まれ)、ユースA(2002・2003年生まれ)、ジュニア(2000・2001年生まれ)の、男女各4つのカテゴリーでメダルを争う。初日、2日目は全カテゴリーが同一のルートで予選を行い、カテゴリーごとに各日AルートかBルートのどちらか1本を登る。最終日の決勝ではユースCを除く、ユースBからジュニアまでが同一ルートに挑み、カテゴリーごとの表彰とは別に、3カテゴリーのなかで最高高度を獲得した選手にJOCクリスタルカップ(総合優勝)が贈られる。
今大会のJOCクリスタルカップには、男女ともユースAの栗田湖有(みう/新潟)、と百合草碧皇(ゆりくさ・あお/埼玉)が輝いた。
昨年、W杯リードにデビューし、シニア年代の国際大会でも経験を重ねている栗田は、前回JOCは同時期に開催のユース世界選手権のために不出場。2年ぶり出場の今大会は、これからも続く競技人生でも思い出深いものになった。
「これまで全国大会で1位を獲ったことがなくて、初めての優勝なのでうれしい。これを自信にして、来年への弾みにしたいです」
笑みをこぼす栗田とは対照的に、固い表情のままインタビューを受けたのが百合草。昨年までは国内ユース3大会での最高順位は4位だったが、今年は3月の印西ユースで初優勝。自身初めての国際大会出場となった8月末のユース世界選手権ではボルダリングで優勝、リードで4位と、著しい成長を見せている。
この大会でも伸び盛りの勢いを存分に発揮し、今年7月に日本人選手4人目となるW杯リード優勝を成し遂げた西田秀聖(ひでまさ/奈良)を抑えて勝利。「これからもっと強くなって、来年はW杯にも出場できるようになりたい」と、次なる目標を掲げた。
10代の活躍が目覚ましいスポーツクライミングでは、JOC出場年代の選手たちであっても、国内のトップレベルを競う選手は少なくない。西田のようにすでにW杯などで実績を残しているのに出場するケースは珍しく、伊藤ふたば、森秋彩(もり・あい)、土肥圭太(どひ・けいた)、川又玲瑛(れい)といった選手たちの姿はなかった。
しかし、今夏の高校野球・甲子園大会に佐々木朗希(大船渡)や西純矢(創志学園)などの姿がなくても大会の放つ熱量に変わりがなかったように、JOCもまた第4回大会から積み重ねてきた桜ヶ池だからこそのエネルギーに満ちていた。