Sports Graphic Number WebBACK NUMBER

日本の次世代クライマーたちが集結。
北陸から世界へ!『JOC』密着レポート。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

PROFILE

photograph byIchiro Tsugane

posted2019/09/30 11:00

日本の次世代クライマーたちが集結。北陸から世界へ!『JOC』密着レポート。<Number Web> photograph by Ichiro Tsugane

JOCだからこそ育まれてきた絆。

 今大会予選後の夜、ホテルの一室でユースCの選手たちは、「三冠なんてさせへん」、「三冠したる」という声を張り上げながら人生ゲームのルーレットを回していたという。声の主は優勝した菊川花恋(かれん/大阪)と、2位の抜井美緒(みお/奈良)。

 菊川は今年の印西ユースで4位、倉吉ユースで2位。一方の抜井は両大会で優勝。迎えた三冠目の今大会で、ふたりとも決勝課題を完登したものの、菊川が予選結果の差で雪辱を果たした。それでも競技後のふたりは「アイス食べ行こか」と、普段通うクライミングジムが違っているとは思えないほど気心を通わせていた。

 ふたりに限らず、会場内のあちこちで同じような光景は見られた。以前に別大会で取材した選手が、ある選手と仲良くなったキッカケとしてJOCをあげた理由がわかった気がした。ほかのユース2大会は勝負色が強いのに対し、この大会は屋外だからこその開放感があり、選手たちに勝負を超えたところでの“絆”を育ませているのだろう。

 桜ヶ池クライミングセンターはJOCの舞台となった2001年から、選手たちの関係性を単なるライバルを超えたクライミング仲間へ昇華させてきたが、今大会にはユース時代に切磋琢磨した今年で27歳のふたりの姿があった。

「今年が南砺での最後になるかもしれないので」

 姿を見せた理由を訊ねると、羽鎌田直人と樋口純裕はそう声を揃える。1992年生まれのふたりは第8回大会から7年連続でJOCに出場し、羽鎌田が4度1位になったのに対し、後にリードで日本選手権とジャパンカップの両方を制した唯一の男子選手になる樋口はJOC未勝利。

 来年以降のJOCの開催地などが決まっていないなか、今大会に羽鎌田は競技責任者デリゲイトとして携わり、樋口はジュニアに出場した妹・結花(ゆか/佐賀)と、父・義明さんが引率する佐賀の選手の応援に東京から駆けつけた。ふたりの現在の立場は運営側と現役選手に変わったが、競技を見ながら話し込む姿には、JOCへの想いが溢れていた。

 これからのJOCがどうなるにしろ、スポーツクライミングがオリンピック種目になるずっと以前から、この地が競技を支えてきた事実が変わることはない。そして、この地で絆を育んだクライマーたちの手によって、新たな時代は切り開かれていく――。

関連記事

BACK 1 2 3

ページトップ