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無念のキングジョージ敗北も、
シュヴァルグランの物語はつづく。 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2019/08/30 17:00

無念のキングジョージ敗北も、シュヴァルグランの物語はつづく。<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

もともと昨年限りでの現役引退を予定していたシュヴァルグラン。1年先延ばしにしての海外挑戦は関係者にとって大きな糧となったはずだ。

鞍上のマーフィーも悔しがった。

 これが結果にも大きく影響した。結果から言うと道中2番手から一度は早目に抜け出したクリスタルオーシャンが2着に粘り、同じく3~4番手にいたジャパン(牡3歳、A・オブライエン厩舎)とエラーカム(牡4歳、M・ジョンストン厩舎)が、それぞれ1、3着。上がりが速く、前残りの競馬となったため、シュヴァルグランはブービーの8着に沈んでしまった。

「一度は前との差を詰める素振りを見せてくれたし、シュヴァルグラン自身、最後まで止まってはいないのですが、周囲の馬がそれ以上に止まりませんでした」

 マーフィー騎手は悔しそうな表情でそう語り、奇しくも不安が的中する形になってしまった友道調教師は次のように言った。

「距離が短い分、もう少しパワーを要する競馬になって欲しかったけど、スローで上がりの競馬になってしまいました。こういう流れだとシュヴァルグランには向かなかったです」

 それでも気を取り直すように続けて言った。

「ただ状態は良かったし、思った通りの仕上げはできたと思います。今回は結果を残せなかったけど、この経験をまた次以降の遠征の時に生かしたいです」

英国に行ったからこそ分かること。

 負けたからといってこの遠征そのものが失敗というわけではない。現地に行かなければ分からなかったことは山のようにあったはずだ。

 例えばこの夏のイギリスは、異常気象といわれるくらい、一時期気温が上昇した。これには大江調教助手が日本から持ち込んだ大型の扇風機が大活躍する形となったのだが、これこそ友道厩舎の過去の遠征経験が生きた一例であった。

 マカヒキで凱旋門賞に挑戦した際、現地には大型の扇風機がなかったため、普通の扇風機を購入後、工作よろしく馬房から顔を出す馬に風をあてられるように細工した。今回はそんな苦労をしないで済むように、最初から大型のそれを持ち込んだのだ。

【次ページ】 シュヴァルグランの物語は続く。

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