競馬PRESSBACK NUMBER
無念のキングジョージ敗北も、
シュヴァルグランの物語はつづく。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/08/30 17:00
もともと昨年限りでの現役引退を予定していたシュヴァルグラン。1年先延ばしにしての海外挑戦は関係者にとって大きな糧となったはずだ。
ひと叩きしての上昇はうかがえた。
キングジョージでは追い切りでも本番でも跨り、今回も同様のマーフィー騎手は、レース5日前にニューマーケットでの追い切りに駆けつけて騎乗。その後、次のように語った。
「反応が良かったし、動きそのものもスムーズでした。こちら(イギリス)での走りに慣れてきている印象を受けました。もちろん、期待しています」
鞍上の言葉からは、ひと叩きされての上昇を感じていることがうかがえた。
ADVERTISEMENT
馬運車で約3時間かけて、レース前夜にニューマーケットから決戦の地となるヨーク競馬場へ移動。レース当日は午前7時に馬房を出て装鞍所からパドックをスクーリング。さすがにゴール前の直線の下見は許されなかった本馬場だが、向こう正面への入場許可をもらい、大江調教助手を背にキャンターで流した。
前日、そして当日と雨は落ちなかったこともあり、大江調教助手は「馬場は良い」と感じていた。
緩い流れになってしまう不運。
ここまではまずまず思惑通りにコトは運んでいた。週末の日本での競馬を終えて現地入りした友道調教師は、それでも慎重に不安要素もまじえた言葉を口にした。
「デキは良いし、馬場状態もキングジョージとは違い良さそうです。 平坦な競馬場に替わるのも好材料でしょう。あと心配があるとすれば、距離ですね。やはり2400メートル以上の方が向く馬なので、2000メートルくらいの距離になる点がどうか。そういう意味ではある程度流れてスタミナやパワーの問われる競馬になってくれれば良いのですが……」
インターナショナルSは10ハロン56ヤード。1ハロンを201.168メートル、1ヤードを0.9144メートルで計算すると約2062.8864メートル。この距離がシュヴァルグランには少し短いのではないか、と危惧したのだ。
結果的には残念ながらそんな不安が的中してしまう。9頭立てとなったこのレースはヨーロッパの大レースとしては珍しく、ペースメーカーが不在。スピードに優るサーカスマキシマスが予想通り逃げる形となったが、距離適性が未知数の同馬のペースはスロー。好スタートを切りながらも挟まれるような形で後方からの競馬になってしまったシュヴァルグランにとっては歓迎し難い、緩い流れになってしまった。