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<eスポーツの世界へようこそ>
モンストグランプリ、戦いの果て。 

text by

河崎三行

河崎三行Sangyo Kawasaki

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photograph byTadashi Shirasawa

posted2019/08/08 11:00

<eスポーツの世界へようこそ>モンストグランプリ、戦いの果て。<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

2カ月半に及ぶ戦いの末、モンストグランプリ2019 アジアチャンピオンシップは、中部予選Bブロック覇者の「どんどんススムンガ」が優勝。

「作品」と呼ぶにふさわしい決勝戦。

 そして彼らは、賭けに勝った。

 考え抜かれた、美しいと形容するほかない立ち回り。それは、見る者の体の芯をぞわっと泡立たせるのに十分だった。乾坤一擲のマッチショットが決まった瞬間、どんどんススムンガは観客の心を完全にがっちりとつかんだ。その時彼らはもう、“じゃない方”のチームではなかった。2019年のファイナルの、輝かしい主役だった。

「誰も見つけられなかった後攻側の立ち回りの完璧な正解を、グランプリの決勝の場で披露した。あの立ち回りは、もはやひとつの『作品』ですよ。本当にすごかったし、本当にカッコよかった」(タイガー桜井)

 考察の中心的役割を担い、時に優しく、時に厳しくチームをまとめるリーダーのぴよまる、25歳。ぴよまるの考察の補佐を務め、最年少ながら常に仲間に気を配るムードメーカーの「グヲタ」、20歳。ぴよまるやグヲタがまとめた考察の青写真を徹底的にやりこみ、実戦で使える具体な形に仕上げていく「おりがみ」、28歳。キャラや敵などすべてのスペックに精通しているチームの知恵袋で、モンストYouTuberとしても活動している「ごーず」、25歳。彼らどんどんススムンガは優勝の報酬として、4000万円の賞金を手に入れた。だが彼らはむしろ、決勝大会でのアマチュア上位4チームに与えられる、プロライセンスを手にできたことの方に価値があると考えている。

「僕たちは本当にモンストが大好きなので、同じようにこのゲームを愛してくれる人が、もっともっと増えてほしいんです。これから関わるであろういろいろなイベントを通して、モンストの楽しさ、面白さを少しでも多くの人に伝えて一緒に盛り上がっていきたい。そんな時、プロの肩書があるとないとでは、発信力が全然違います。だからこそ、アジアNo1の称号より、とにかくプロライセンスがほしかった。その夢はセミファイナルに進出した時点でかないましたから、ファイナルはオマケみたいなもの。もうただただ、こんな舞台で遊べるのが楽しくて仕方がないって感覚でしたね」(ぴよまる)

仕事とモンストの両立を目指して。

 彼らには賞金とプロライセンスに加え、特別仕様のトヨタ『カローラ スポーツ』など、多くの副賞も贈呈された。もちろんそれぞれチーム内で山分けされるが、カローラは前々から車を欲しがっていたおりがみが手にするという。ぴよまるも運転は決して嫌いではないが、この車には、ちょっと乗れない事情がある。

 彼の仕事は、三菱自動車本社勤務の開発テストドライバーなのだ。

 さすがにその立場で、モンストキャラのラッピングが施されたド派手なトヨタ車に乗るわけにはいかない。しかも彼はどんどんススムンガがこれからプロになるにあたり、自らの勤務先にある要望を持っている。

「チームスポンサーについてもらえないかなって……。いや、ぜいたくは言いません。中部以外の場所で大会やイベントがある時の、4人分の交通費だけでも賄ってくれたらありがたいんですが」(ぴよまる)

 ぴよまるは近々、この提案を職場の所轄部署に持ちかけてみようと思っている。

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