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<eスポーツの世界へようこそ>
モンストグランプリ、戦いの果て。
posted2019/08/08 11:00
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph by
Tadashi Shirasawa
カンッと乾いた大きな音が、スピーカーを通して会場のアリーナに響いた。
敵のボスが突然ぶるぶる震え始めたかと思うと、その体の上に12,521,487という、とてつもないヒットポイント(被ダメージ)数値が表示される。
「おおっ、マッチ!」
モンストのインフルエンサーとして知られ、この日の解説も務めていたタイガー桜井が叫んだ。かぶせるように、すかさず実況アナウンサーが続ける。
「狙っていたのは、これかーっ!」
アリーナには、地鳴りのような観客のどよめきが湧き起こっていた。
桜井の言ったマッチとは“マッチショット”のことだ。モンスターによってはごくまれに、通常の弱点ポイントのすぐ横に、別の急所を持っていることがある。そこを薄い角度、つまりマッチをする時のような角度でヒットすると、弱点ポイントを攻撃した時以上の甚大なダメージを与えられる。そのマッチショットが見事に決まったのだ。
瀕死のボスは、同じく痛手を負った中ボスを引き連れ、最終ステージへと逃げる。だがもはや余力はなく、次のターン(プレーヤーの手番)でとどめを刺されて「どんどんススムンガ」の第1戦の勝利が決まった。
日本、香港、台湾から集った10チーム。
勢いに乗ったどんどんススムンガは、もう手が付けられない。続く第2戦も巧みなキャラ編成を生かして接戦を制し、ストレートでアジア王者の座を手にしたのだった。
7月13、14日の2日間、幕張メッセを舞台に日本各地区、香港、台湾の代表計10チームで争われた『モンストグランプリ2019 アジアチャンピオンシップ』決勝大会。そのファイナルには、「Cats」とどんどんススムンガが駒を進めた。
両者のうち、より優勝に近いと見られていたのはCatsだ。初出場ながらレベルが高い関東予選の全バトルRound(BR)をすべてストレート勝ちし、決勝大会初日のタイムアタックRound(TR)でも、ダントツの1位。チームを率いる「♡るんるん♡」は19歳ながら熟達したスキルを持ち、ピンクに染めた髪やふてぶてしいまでの自信に満ちた発言など、一種ヒール的な華がある。その押し出しの強さとチームの前評判が重なり、決勝大会前に主催者が日本語アプリ内で行なった優勝予想投票では、3位に食い込んでいた。