球道雑記BACK NUMBER
前半戦をリーグ首位打者で折り返し!
ロッテ荻野貴司、復活の裏にある物語。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/07/15 08:00
走攻守のすべてが高いレベルで実現しているプロ10年目の荻野貴司。幾多の怪我を乗り越えてきた天才は完全復活を果たせるか?
大塚コーチが反省する内容とは?
そうした体のケアにも気を配る荻野の想いは、大塚明一軍外野守備・走塁コーチの胸にも十分届いている。大塚も彼なりのアプローチで荻野の身体の動きを日々チェックしている。
「医療に携わっている方に聞いた話ですが、我々は鉄を担いで走っているようなものだって言うんです。
つまり体幹の柔軟性が失われると、肩にしろ、肘にしろ、体幹との連動性を失って、その結果、小手先だけで頑張り過ぎて(限界が)来てしまう。コア(体幹)が主導になって動く手先、足先は良いんだけど、そこが動かないと手先、足先に頼るわけじゃないですか。そうなると(腱が)切れてしまう。そういうひとつの論点もあるわけです。
だから僕は、彼(荻野)のスローイングを見ているときも、疲れてくるとカーブみたいな、子供が投げるジャイロ回転のようなボールを投げることがよくある。なので、現場を預かる身としてそういう日々の変化を見るようにしているんです」
大塚が言うには昨シーズン中盤、戦線離脱する要因となった右手人差し指の怪我も、そうしたコアの柔軟性を保つことで防げることではなかったかと、自身の反省も含めて話す。
「昨年も試合中に打席で手にボールを当てて怪我しましたけど、やっぱり疲れからコア部分の機能性を失って、振りにいった結果、ボールにガーンとぶつかってしまったのがあると思うんですよね。あそこでちゃんと(体を)割っていれば避けられていたものが、体を振ってしまったから、そうなってしまったわけで……。
そういう傾向が例えばスローイングから見ても、バッティングから見てもそうだし、必ず症状として出るわけですよ」
荻野のポテンシャルなら8割の力でも。
こうした日々の変化については、2人でセッションを重ねることで防げると考える。荻野のポテンシャルを持ってすれば、8割の力でも充分、今季の数字(成績)は残せると考えている大塚コーチだけに、コンディショニングについては技術指導以上に特に気を配る要素だろう。
「残りの20%を極めようとするのは彼の“欲”の部分じゃないですか。その部分は、その道の達人に話を聞かせてもらいながら、求めていけば良いと思うんだけど。僕はその80%を維持できれば充分と思うし、その80%を維持できるように日々観察するわけです。
もちろん残りの20%についても僕なりの感性を突っ込んだりはしますよ。そこはいつもの会話ですよね。そこで彼が納得して取り入れることもあるだろうし、自分独自でやりたいこともあるだろうしって感じです」