マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校の野球部員が減少する一因?
「選手が主役」を取り戻すために。
posted2019/07/11 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
「高校球児が進む大学に、高校から制約が加えられる」話を前回紹介したが、これには“続き”がある。
ご両親とお兄ちゃんの切実なやりとりを傍らで聞いていた弟・小学6年生が、「それなら、僕は中学で野球やるの止める!」と言い出したのだそうだ。
なんで行きたい学校に行けないの?
なんで家族でもない、関係ない人に学校決められちゃうの?
子供ながら実にもっともな疑問をぶつけながら「大学だって、自由に決められないなんて、おかしいよ! 高校野球ってそんな変なとこだったら、僕はサッカーかバスケにするよ。それなら、自分で決めた高校や大学行けるんでしょ」
最後は、涙を流しながらの訴えと宣言だったそうだ。
その場にいたお父さん、お母さん、お兄ちゃんの3人は、小学6年の弟の言い分があまりに“その通り”だったので誰も返す言葉がなく、逆に、自分たちが置かれた状況がいかに理不尽な状況なのかをあらためて実感したという。
高校球児の減少の理由はここにも?
ちょうどそんな折り、日本高野連からこんな報告が発せられた。
「全国の高校野球部員が昨年よりおよそ9300人減少」
人にとって、進路とか「夢」と言い換えてもよいだろう。
ある方向にベクトルを向けるその根拠が、かりに子供っぽい憧れであったとしても、自分で思い描いて、自分で思い定めたベクトルだからこそ夢として輝き、若いエネルギーをぶつけられるというものだろう。
達成感も自己実現も、そうした“お手製”の夢の向こうにしか結実しないのではないか。
人がお膳立てしてくれた未来の中に、本当の意味の、純粋な意味の「夢」は決して見いだせない。
高校球児が減少してしまった「9300人」の中に、こうしたケースで野球から離れていった少年が何人かいたとしたら、こんなに悲しく残念なことはない。