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藤田菜七子が世界の舞台で戴冠。
その笑顔を、次は日本で見たい。 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2019/07/04 08:00

藤田菜七子が世界の舞台で戴冠。その笑顔を、次は日本で見たい。<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

勝負の第5レースで総合優勝を決め、藤田菜七子騎手から白い歯がこぼれた。

優勝が懸かった最終レース。

 こうして海外初勝利を挙げたわけだが、この日、最大の盛り上がりはこの瞬間ではなかった。続く2つのレースで5着、2着とした藤田騎手は、この時点の総合ポイントでトップから僅か3点差の3位。本人もそれを知った状態で最終第5戦を迎えた。

「勝てば逆転優勝だったので、なんとしても勝ちたいという気持ちで臨みました」

 芝2100メートルのこのレースで騎乗したのはチルターンズ。調教師からの指示は「出来たら逃げ馬の後ろにつけてほしい」というものだった。

 それを頭に入れてゲートを出ると、絶好のスタートを切り先頭に立った。

「好スタートを切れたので、行く馬がいないなら逃げても良いというつもりでハナへ行きました」

 ところがそこから1頭だけ、競りかけてくる馬がいた。するとJRA唯一の女性騎手は、冷静にこの馬を先に行かせて2番手に控えた。

「相手が行く構えを見せていたのでそれならどうぞ、という感じで抑えました。お陰で指示された通り、逃げ馬の後ろの位置で競馬が出来ました」

前日にコース一周、準備を怠らない藤田。

 番手に控えた藤田騎手はそのままインを死守する。彼女は前日にコースを歩いて一周し、「馬場のどの部分が綺麗か?」「コーナーはどのような感じか?」「ハロン棒はどこにあるのか?」などをあらかじめ確認していた。

「コーナーが大きい競馬場なので、あまり外を回る形にはならないよう心がけました。とくに2100メートルのレースは気を使いました」

 2100メートルのスタート地点は1コーナーの引き込み線。東京競馬場の芝2000メートル戦を想像してもらえばよい。そして、ブローパーク競馬場のコーナーは最初の1~2コーナーと、最後の3~4コーナーでは円弧の大きさが全く違った。2100メートル戦だと最初にタイトに1コーナーを回った後、緩やかに2コーナーをカーブ。そんな少々トリッキーな形状なのだ。それだけに気を使ったという藤田騎手だが、こうやって準備を怠らない勝負師に、勝利の女神は微笑んだ。

「後ろから突かれる事がなかったので、すごく楽に競馬が出来ました」

 だから直線を向いてからも余力が充分にあった、と続ける。

 直線半ばで逃げ馬を悠々かわすと後は独擅場だった。自身海外2勝目は、同時にウィメンジョッキーズワールドカップ2019のクイーンを決定づける勝利でもあった。

【次ページ】 「日本での経験を生かせた」

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