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“島流し”状態のガンバ若手を磨く、
森下仁志U-23監督の目利きと反骨心。
posted2019/06/04 11:30
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
J.LEAGUE
恵まれた環境だけが、人を育てるわけではないことをガンバ大阪の若手が証明し始めている。
ハングリーさと反骨心――。森下仁志監督が今季から指揮を執るガンバ大阪U-23は、育成面において早くもその成果を見せ始めているのだ。
トップチームがホーム初勝利を飾った5月18日のセレッソ大阪戦では、プロ2年目の福田湧矢が先発に抜擢され、左サイドで躍動。大阪ダービーの1週間前に行われたアウェイのサガン鳥栖戦では敗れたものの、終了間際に食野亮太郎が相手DFをゴボウ抜きにし、強烈なシュートをネットに突き刺した。
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「最初はキャンプにも参加できず、苦しい思いをしましたけど、そこで仁志さんと裕司さんが自分を救い出してくれた。今日は仁志さんと裕司さんのために戦ったようなものでした」
セレッソ大阪戦で勝利に貢献した直後、福田が口にしたのはガンバ大阪U-23の森下監督と宮原裕司コーチへの感謝だった。プロ選手らしからぬ青臭い言葉に聞こえるかもしれないが、4カ月前の立ち位置を考えれば、その言葉は必然である。
同行しない組に漂う“島流し”感。
まだ厳しい冷え込みが続いていた今年1月23日、パナソニックスタジアム吹田のすぐ脇にあるクラブ練習場でガンバ大阪U-23は、びわこ成蹊スポーツ大学とシーズン初の練習試合に挑んでいた。
しかしながら、練習場に漂っていたのはどこか“島流し”にも似た雰囲気だ。沖縄で行われているトップチームのキャンプに同行できなかったのはわずか6人のみ。食野や福田、市丸瑞希(FC岐阜に育成型の期限付き移籍中)、芝本蓮、白井陽斗、そしてルーキーの奥野耕平がユースの練習生とともに練習試合のピッチに立っていた。
「うわぁ、マジかよと当時は思いましたね」と率直な胸の内を明かすのは福田である。
無理もない話だった。同期入団の松田陸らは沖縄でトップチームに帯同。GKさえいない6人で練習するのは、草サッカーでもそうそうお目にかかれない光景なのだから。
キャリアに違いはあれど、エリート街道を歩んできた彼らにとっては心が折れかねない環境だ。