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世界的なサッカーバブルは頭打ち?
プレミア放映権が下落、Jの影響は。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2019/05/30 11:25
世界で最も華やかなプレミアリーグ。しかし2019-20シーズンから放映権料が約10%の減額となるとは驚きだ。
投資対効果で各国リーグを比べると。
それは、弊社の調査チームが明らかにした次のデータが物語っています。
調べたのは、各国リーグの放映権の買い手である放送・通信事業者のROI(投資対効果=支払う放映権料に対して、どれくらいの儲けがあるか)。サービス利用料×契約者人数を概算の売上高とし、その売上高を放映権料で割る、という簡易的な手法を用いています。その結果を以下に示しました。
<プレミアリーグ>
契約者数×契約料:36億200万ドル
放映権料:13億9200万ドル
ROI:2.02
<ブンデスリーガ>
契約者数×契約料:21億100万ドル
放映権料:9億8800万ドル
ROI:2.13
<リーグアン>
契約者数×契約料:19億8600万ドル
放映権料:8億1900万ドル
ROI:2.42
<セリエA>
契約者数×契約料:11億6900万ドル
放映権料:10億9800万ドル
ROI:1.06
<Jリーグ>
契約者数×契約料:2億4200万ドル
放映権料:1億8900万ドル
ROI:1.28
※契約料はDAZN for Docomo 980円/月、DAZN 1,750円/月、契約者数:DAZN for Docomo が100万人、DAZNが50万人、放映権料:210億/年($189m/年)と仮定。
<リーガ・エスパニョーラ>
契約者数×契約料:36億800万ドル
放映権料:11億600万ドル
※放送局契約者数のデータ不足により参考値
英プレミアリーグのROIは「2.02」で、独ブンデスリーガの「2.13」はほぼ同等と言えます。
仏リーグアンは「2.42」ですから、放映権料が割安な状態にある(事業者の利益が大きい)ことを示しています。ただ、放映権料の推移をあらためて見ると、2020-21シーズンからの4シーズンは放映権料が大幅にアップするので、英プレミアリーグ並みの水準に収束していくものと予想されます。
DAZNが参入したJとセリエの共通点。
一方で、伊セリエAとJリーグは、それぞれ「1.06」「1.28」という低い数字が出ました。放映権料が割高で、事業者が得る利益が非常に小さい状況であることを示しています。
この2つのリーグに共通しているのが、国内放映権の市場にDAZNが参加していることです。
伊セリエAの国内放映権市場に、DAZNが参入したのは昨年のこと。ユベントスのクリスティアーノ・ロナウドをDAZN初のグローバルアンバサダーに起用するなど、強力なプロモーションをイタリア国内で展開しています。
当然ながら国民は自国リーグへの関心が高いので、「国内」の放映権を「独占的に」獲得し、マーケットで支配的な立場を得ることは、非常に大きな意味を持ちます。DAZNとしても、そこに懸ける勝負の度合いは強く、投資対効果が低くなることは承知の上で放映権を買いつけにきていると考えられます。