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世界一のラグビー大国の組織作り。
スポーツ統括団体に必要な能力は?
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2019/05/26 10:00
イングランドと日本の両国のラグビーを知るエディー・ジョーンズ。
'18年は過去3年で最大の赤字。
こうした費用を賄う収益の柱は、TV放映権の4100万ポンド(約57億5000万円)、「ホスピタリティ」と呼ばれるVIP席関連収入の4100万ポンド、チケット販売の3000万ポンド(約42億800万円)、スポンサー収入の2900万ポンド(約40億6800万円)となる。
だが、2018年度の収益は1億7200万ポンド(約241億3000万円)に留まり、RFUは3100万ポンド(約43億4900万円)の赤字を計上している。'15年から'17年の3年間での総損失が1100万ポンド(約15億4300万円)だったことを考えると、'18年の赤字は甚大なものだ。
日本ラグビーフットボール協会が、私益ではなく公益を目的とした公益法人の形態をとっているのと同じように、RFUも大義では非営利団体としての性格を持った組織だ。
ただし、人事や財務の透明性においては「株式会社レベル」の運営を行い、「収益はラグビーの発展に繋がる活動に再投資する」という理念を掲げている。
ビジネスライクな決断。
毎年公開される年次報告には上場株式会社のIR(インベスター・リレーションズ)が株主に向けて公表するレベルの財務諸表が公開され、2018年度のCEOへの報酬は39万5000ポンド(約5500万円)、CCO(Chief Commercial Officer)へは24万4000ポンド(約3400万円)が支払われている。
年間支出が1億ポンド(約140億円)を超える組織を英国で株式会社レベルで運営するとなると、“無慈悲なビジネス上の決断”も下されることになる。
2018年度のRFUは、トゥイッケナム競技場の改築工事という大プロジェクトで、5300万ポンド(約74億3400万円)の予算に対して8100万ポンド(約113億6200万円)を費やし、代表チームの遠征費や代表へ選手を輩出するクラブへの報奨金などでも、軒並み予算超過を記録。この埋め合わせとしてRFUはこの年、従業員数の約1割にあたる64人を対象としたリストラに踏み切った。
さらにその数カ月後には、CEOのスティーブ・ブラウン氏が、「コストを予算内にコントロールできていない」との声が内部関係者から挙がるなか、自らその職を退いている。