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西村が、富樫が体現した「進化」。
千葉ジェッツが2年越しのリベンジへ!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2019/05/10 11:30
栃木ブレックスとのセミファイナルGAME2では21得点8アシスト。CSに入りさらに調子を上げている千葉ジェッツ・富樫勇樹(中央)。
シャイな西村が富樫と喜びのジャンプ。
GAME2の第4Qの残り3分53秒、彼は勝利に大きく近づく3Pシュートを決めている。直後にブレックスがたまらず、この試合最後のタイムアウトをとると、アシストをした富樫勇樹と飛び上がって、身体をぶつけて喜びを表現していた。
自らのプレースタイルを「省エネ」と語り、チームが好調のときも劣勢のときにも、ポーカーフェイスでプレーする西村と、チームの顔役である富樫のアクションを目の当たりにして、会場はこの試合で一番と言っていいくらいの熱狂に包まれた。
あの場面について西村はこう話している。
「いつも以上にみんなの勝ちたい気持ちが前に出ていたので、そういうときって、ああいうジャンプなどが多く出るんですけど、それはすごく良いことなので。そんななか、いつもみたいに、自分がクールでいると、周りと温度差があって、『何だ、こいつは?』と思われるのも嫌なので……そういうところはちゃんと乗っかるよということです(笑)」
試合後、富樫は笑顔でこう話していた。
「文男さんはね、シャイなんですよ(笑)」
体を投げ出したプレーは「3年間の結晶」。
ただ、そんな西村はGAME1でも象徴的なプレーを見せていた。第4Qの残り16秒、8点差をつけ、勝負は決まりかけていた。
ブレックスの竹内公輔へのパスをカットしようとして出した手にあたったボールがコートの外にはねていく。すると、西村がボールに触れようと体を投げ出したのだ。だが、ボールをコートに戻すことは出来ず、床に打ち付けられる。富樫もすかさず手を差し伸べた。西村はあのシーンをこう解説する。
「自分のなかでは、わりと通常運転のつもりなんですけど……会場の雰囲気であったり、チームのみんなの勝ちたい気持ちに押された部分はあるのかなと思います」
ジェッツのヘッドコーチ(HC)を務める大野篤史は、あのシーンを目の当たりにしてこう感じたという。
「あれって、このチームでやってきた3年間の結晶かなと思っています。彼はバスケIQが高くて賢い選手で、バスケットの巧さについてはこのチームでも1番なわけです。そこだけに目を向ければ、あのようなプレーを最もやらなさそうな選手ですよね?」
西村がチームにエナジーをもたらすようなプレーができなかったわけではない。けれど、彼には、彼のスタイルがあった。かつてはこうも語っている。
「アニメの主人公のような熱さではないというのは、自分でもわかっています。ポーカーフェイスなところもありますし。自分のなかで勝手に熱くなっているだけで、他人にあまり見せないような感じはあります」
現在はチームの日本人選手のなかで上から2番目、Bリーグ初年度からジェッツでプレーする日本人選手のなかでは最年長である。プライドを捨てるのにもプライドがいるように、経験のある選手がそれまでとは違うプレーを表現するのは簡単ではない。たとえ、それを出来るだけの能力があったとしても、だ。