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西村が、富樫が体現した「進化」。
千葉ジェッツが2年越しのリベンジへ!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2019/05/10 11:30
栃木ブレックスとのセミファイナルGAME2では21得点8アシスト。CSに入りさらに調子を上げている千葉ジェッツ・富樫勇樹(中央)。
「チームに一体感をもたらした」
大野HCはあのプレーの持つ、大きな意味をこう話している。
「彼のような選手が、取れるか、取れないかわからないルーズボールに向かってダイブした。あのプレーによって、もたらされたプラスアルファのものはかなりありますよね。もちろん、ファンのみなさんにも良い影響がある。そして、チームにも一体感をもたらしてくれましたから。『文男さんが飛び込むんだったら、俺だって、飛び込むぞ!』という想いを他の選手も持ってくれたと思うし。
そして、僕はこの3年間、そういうものをチームに求めて、彼はそういうところでも変わってくれたのかなとも思います」
思い出されるのは、今からおよそ2年前。Bリーグの初年度のファイナルの試合の最終盤だ。ブレックスの優勝が決まりそうな雰囲気が漂うなか、残り30秒をきってもなお、ジェフ・ギブスが、田臥勇太が、身体ごとルーズボールに飛び込んでいった。負けていても、勝っていても、変わらない。それがブレックスの強さであり、チームを初代王者へと押し上げたものだった。
大野HCが追い続けていたもの。
ジェッツはBリーグ開幕後の天皇杯で3連覇を飾るなど、ポテンシャルを備えたチームだった。それでも、大野HCは勝利をつかむことはもちろん、それよりももっと大きな夢――ジェッツがファンに長く愛されるようなカルチャーを作り上げるために、エナジーを体現するように選手たちに強く求めてきた。
それをアニメの主人公のような強さを見せるタイプではないと自認する選手までもが、しっかり表現する。
さらにいえば、大野HCはチームの指揮官として、PGに「チームのトーンをセットする選手であって欲しい」と求めてきた。いわばPGにコート上の指揮官になることを求めた。チームの指揮官であるHCが求めたことを、コートの上での指揮官であるPGが、きっちりと表現する。
隙のないチームはこうして、生まれる。