甲子園の風BACK NUMBER
平成最後はSMAP&マッキーで入場。
センバツ行進曲ってどう作られる?
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byKyodo News
posted2019/03/23 07:00
球春到来を感じさせるセンバツの入場行進。その曲もいろいろな物語があって作られているのだ。
バラードでも問題ないんです。
寒さへの細やかな配慮には、思わず膝を打った。筆者も元吹奏楽部なのでよくわかるが、気温の低い場所での演奏は、とにかく指が回らない。わかりやすくいうと、指先が冷えて細かいフレーズがうまく吹けないのだ。
アルプススタンドで吹奏楽部の生徒たちを見ていると、指先だけ穴を開けた手袋をはめていたり、相手の攻撃中にカイロで手を温めたりと、皆寒さ対策に余念がない。
ちなみに、行進曲に編曲しにくい曲はあるのだろうか。たとえば、ゆったりとしたバラード調の曲などは、なんとなく歩きにくそうな気がしてしまうが……。
「バラードでも問題ありません。基本的に行進曲にできない曲はありませんが、ラップ調の曲だけは除外してほしいと毎日新聞さんにはお伝えしています。ラップの部分を楽器で演奏して再現することができないからです」
「どれも自信作でお気に入り」
これまでに酒井氏が手がけた曲の中で、特に苦労した曲やお気に入りの曲はあるのだろうか。
「アレンジで苦労した曲は特にないですね。いつも最高の出来と思って完成させていますので、どれも自信作ですべて気に入っています」
毎年、開会式のリハーサルも現地でチェックする。
「演奏を聴くのはもちろんですが、歩き方がきれいな学校に目がいきますね。今回は高松商業の行進が美しかったです。でも、リハーサルではイマイチでも、開会式本番でビシッとする学校もあるんですよ。リハーサルでポイントを指摘されるからなのか、数万人の観客が入ることによる緊張感からなのかはわかりませんが……(笑)」
夏の甲子園の演奏は関西の高校生が担当するが、センバツでは警察音楽隊が演奏する。夏の若さあふれるフレッシュなサウンドとはひと味違った、大人が奏でる落ち着いた魅力の行進曲にもぜひ注目を。