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<展望レポート>
ルーマニア戦勝利から見えた桜の未来。
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/06/15 06:00
前半12分、ラファエレのキックパスを受け山田が独走トライ。チームに勢いを呼び込んだ。
2019年のW杯プールAで対戦濃厚な東欧の“重厚なる壁”を相手に、ジャパンは「はやさ」「忍耐」に基づく戦術を遂行し、勝利を飾った。この一戦から見えた収穫と課題、そして今後開けていく道筋とは――。
ひとつのスクラム。おそらくは象徴的な意味でしかない。押せば、次は押される。退いても、こんどはこちらが進む。そういうものだ。
それでも長い背筋をたわみのない板としながら、なお、かすかに丸みを帯びる赤と白の塊が、雄大な骨格の東ヨーロッパ人と最初に組み合うと「しっかり頼むぞ」なんて手に汗をかいていた。
人々に喜びを与えるための楽でない旅が始まった。2019年、ワールドカップ(W杯)日本大会の組み分けが決まり、いよいよ敵(アイルランド、スコットランド)と仮想敵(欧州1位および欧州・オセアニアプレーオフ勝者)の輪郭は明らかとされ、熊本に、そのひとつとなるであろうルーマニアを迎えた。世界ランク16位ながら、ことスクラムの威力では最上位の一角をなす。