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今季最高の奇跡を起こした海外組。
豊川雄太とマケレレ監督の信頼関係。
text by

中田徹Toru Nakata
photograph byAFLO
posted2018/05/25 10:30

かつて“ジダンのサポート役”として名を馳せたマケレレ監督から信頼される豊川雄太。ベルギーの地で残したインパクトは大だ。
「日本人だろ? 出来んのかよ」
小野伸二がフェイエノールトに来た頃、オランダでは「日本人にサッカーが出来るのか」と言われていたが、その後の活躍で「日本人のMFなら大丈夫」という評価が生まれた。それでも堂安律はフローニンゲンで「舐められている」と感じ、結果を出すことで周りを黙らせたという。
「俺も最初はそんな感じでしたよ。『日本人だろ? 出来んのかよ』って。別に言われたわけではないですが、そういう雰囲気というのを敏感に感じました。
日本人はみんな、どっかでそう感じていると思いますよ。だから変えていくしかない。俺はその悔しさが原動力になった。とりあえず練習で結果を出すしかない――となって、練習のミニゲームで点を取ったんです。そしたら、周りが『お前はめっちゃ点取るな』と言ってくるんですよ。そこから出場機会を得ることが出来たんです」
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入団後ベンチ入りが3回、ベンチ外が2回と、5試合続けて出場機会がなかった時は「悔しい。早く練習来い!」と思っていたという。
練習で点を取ったら使ってくれた。
豊川のベルギーリーグ・デビューは、2月17日のズルテ・ワレヘム戦の70分だった。以降、マケレレ監督は少しずつ豊川に出場時間を与えていった。
「やっぱりマケレレ監督は見てくれているんだと思いました。マケレレ監督は俺が練習で点を取った週に試合で使ってくれたんです。そこから全試合に出ました。それが最終戦のハットトリックまでのシナリオです。監督によっては練習で結果を残してもダメな人っているじゃないですか。俺の場合、そうじゃなかったから良かったのかもしれません」
レギュラーシーズンの7位から15位までのチームが参加する、プレーオフ2の第4節、4月18日のアントワープ戦では初先発を果たした。続く第5節、4月21日のSTVV戦では1トップを務めゴールを決めた。
「1トップに入った時『結果を出せるな』という感覚が自分のなかであって、運良く結果を出せました。それまで俺は2トップかサイドで、ハットトリックを決めた時もサイドでプレーしていました。でも、中央でプレーする方が自分は生きると思っています。ゴールに近いところで相手DFラインと駆け引きするのが、とても好きなんです」