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「選手のために」と小塚崇彦が開発、
フィギュア史を変える国産ブレード。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakaomi Matsubara
posted2018/04/29 17:00
小塚崇彦が説明する「KOZUKA BLADES」。スケーターのことを考えて作られたものだ。
見よう見まねのデザインからスタート。
この日展示されたものは、11.5kgの塊から削り出された271gのブレード。
「削り出す作業は機械で数値化されているので、99%同じ製品が出来上がります」
また、従来の製品に使用されている素材が安価なものであることも分かり、素材そのものにもこだわった。ブレード自体に靭性(粘り)があり、ジャンプの着氷時など衝撃の吸収性を向上させ、身体への負担の軽減を図るなど、様々な工夫が施されているという。
製品として完成に至るまでは試行錯誤が続いた。山一ハガネの技術開発センター長、藤井正法氏は語る。
「スケートが分からない集団ですので、見よう見まねでデザインするところから始まり、既製品を分析した上で作りました。小塚さんが試してみて、感想などをフィードバックしていただき、修正してまた履いて、という時間のかかる作業を続けてきました」
耐久性が向上し、無良も2シーズン使用。
選手の繊細な感覚の部分を反映しながら、改善を試みてきた。
すると小塚の他にも使用する選手が現れた。その1人、無良崇人は2シーズン使い続けてもブレードに形状の変化が見られず、換える必要がなかったという。高さと迫力のあるジャンプを持ち味とする無良である。それは従来のブレードからの、耐久性の飛躍的な向上を物語っていた。
価格は17万5000円(税別)。従来のものはおおよそ7~9万円であることを考えると、少々割高にも感じられるが、小塚はこう説明する。
「従来のものであれば男子は1~2カ月、女子は8~9カ月で交換します。平均をとって6カ月で交換するとすれば、オリンピックとオリンピックの間の4年という期間を考えると、8回交換が必要ということになり、8万円×8回で64万円。このブレードは16カ月はもつので4年間で3回の交換、52万5000円におさえられます。また、業界では初めてのことですが、6カ月間の保証書もつけます」