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「選手のために」と小塚崇彦が開発、
フィギュア史を変える国産ブレード。
posted2018/04/29 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Takaomi Matsubara
フィギュアスケート男子の元五輪代表の小塚崇彦氏が4月24日、名古屋市内の企業とともに開発したスケート靴のブレードを発表し、販売を開始した。
名前は「KOZUKA BLADES」。
新たな方向性を打ち出し、従来のブレードの欠点を乗り越えようという意欲的な製品だ。
ブレードとは、靴についている刃の部分のこと。小塚が現役時代、足型の作成で訪れた際、高精度金属加工メーカーとして業界内では高い評価を得ていた山一ハガネの技術力を知り、「ブレードを作れるんじゃないか」と相談したことから、共同開発がスタートした。
自ら開発を手がけようと思ったのは、現役時代から問題を感じていたからだと語る。
従来の製品だと2週間から1カ月で問題が。
従来の製品は3つのパーツを溶接することで1つの形となり、それが靴に取り付けられている。その構造がトラブルを起こしがちだった。
「接合されている部分が、練習や試合でジャンプをやっている中で折れてしまったり曲がってしまったりする。男子の中には2週間から1カ月でそうなる選手がいます。また、溶接は人の手でされているため、(位置に)1.5ミリのずれだったり、1.5度程度のずれがあったりします。ブレードの形状に選手が合わせないといけない現状があります」
氷上と接する最も重要な道具であるにもかかわらず、耐久性に乏しく、品質にばらつきがあることを意味している。それは選手にとって、不安材料となる。
解決策として山一ハガネが提案したのは、大きな金属の塊から削り出して製品を作り上げる手法だった。
「ブレードは溶接、つまりプラスの作業ですが、提案を受けたのは、もともとあるものから削り出していく、マイナスの作業。こういう方法があるのかと最初は驚きました」
全体を1つのパーツとすることで、溶接がもたらす弊害の解消を図った。