Overseas ReportBACK NUMBER
大坂なおみはハイチの誇りでもある。
スポーツと国籍とアメリカンドリーム。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byZUMA Press/AFLO
posted2018/04/11 17:00
BNPパリバOPでの大坂なおみの優勝スピーチ風景。はにかみながらの素朴なスピーチは好感度も高く、世界的な話題となった。
アメリカ・マラソン界で英雄になった移民。
2008年北京五輪の開会式でアメリカ代表の旗手に選ばれたロペス・ロモンは6歳の時にスーダンの内戦に巻き込まれ孤児になったが、16歳の時にアメリカのキリスト教団体の助けを得て渡米。中距離で頭角を現し、23歳で晴れてアメリカ代表としてオリンピック出場を果たした。
2014年のボストンマラソンで優勝したメブ・ケフレジギもロモン同様に、12歳の時に内戦の続く現エリトリアからアメリカに移住した1人だ。
ケフレジギは2013年に同マラソンで起きたテロで亡くなった人たちの名前をナンバーカードに書いてレースに臨み、アメリカ人選手として31年ぶりに優勝を果たすと、アメリカ・マラソン界の英雄的な存在に上り詰めた。
「テロで犠牲になった人たち、ボストンの人たちのためにどうしても優勝したかった。“Boston Strong(ボストンは屈しない)”」とゴール後に涙を浮かべながら話す姿に、多くの人がもらい泣きしていた。
プレーは批判するが、国籍や人種は関係ない。
現大統領が大統領選挙の際に票集めを狙って移民排斥や差別主義を声高に叫んできたこともあり、極端な意見を持つ人も少なからずいるけれど、アメリカというスポーツ大国では目標をもって戦う選手を好意的に見る人が圧倒的に多い。
もちろん成績が落ちれば叩かれることもある。
しかしそれはプレーに対してであり、人種や国籍を批判するものではない。