Overseas ReportBACK NUMBER
大坂なおみはハイチの誇りでもある。
スポーツと国籍とアメリカンドリーム。
posted2018/04/11 17:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
ZUMA Press/AFLO
「ナオミ・オオサカを知ってる?」
先日、空港まで利用した「Lyft(リフト、自動車配車サービス)」の運転手がハイチ出身だったので、何気なく訊ねてみた。
60代前後の男性運転手はバックミラー越しに視線を向ける。
「知ってるなんてもんじゃないよ。ハイチの人はみんな彼女を応援しているよ。この前の大会で優勝しただろう。ハイチの誇りだよ」とまくし立てた。
大坂なおみ選手はハイチ出身の父(ハイチ系アメリカ人)と日本人の母のもとに大阪で生まれ、3歳の時に渡米。ハイチに住んだことはないはずだが、同地では大きな注目を集めているという。少し驚きだった。
「ナオミが日米どちらで東京五輪に出場するかちょっと話題になっているんだけど」と言うと、こんな答えが返ってきた。
「テニスの環境はもちろんだけど、その後の生活のことも考えて自分自身で最良の選択をしてほしい。どの国を選んでも、自分もハイチの皆も彼女のことをずっと応援するよ」
自分と同じルーツを持っているから住む場所や国籍は関係ない、という大らかな言葉が心に響いた。それと同時に、大坂選手が日本以外の国籍を選んだ場合、日本人はどんな反応をするのだろう。そんな気持ちが頭をよぎった。
すばらしい選手を手放しで応援する米国。
3月のBNPパリバ・オープンでツアー初優勝を決めた大坂なおみ選手。
優勝スピーチは、彼女自身が「テニス史上、最悪の優勝スピーチになっちゃいましたね」というほど初々しさに溢れていたが、シャイな性格と打って変わって、コート上ではパワフルなプレーや強烈なサーブが持ち味。
女子テニス界を牽引する若手として大きな期待がかけられている。