ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
次期日本代表監督はロドリゲスに。
と、思わせる徳島“渦潮”サッカー。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/24 17:00
2014年に降格し、今年でJ2は4年目。ロドリゲス監督を迎えて作ってきたスタイルが着実に実を結びつつある。
インテンシティこそ命綱、という覚悟。
外から中へ斜めのパスを入れて、そこからワンタッチの連続で中央をこじ開ける、巧みなコンビネーションは小気味がいい。独りでゴリ押しできるようなアタッカーはいないから、人数をかけて崩すのだ。2トップの選択も、きわめて合理的と言っていい。
チームの心臓はアンカーの岩尾憲だ。徳島のバンディエラ(旗頭)にして不動のキャプテンでもある。徳島の攻めが短いパスの連続にならないのは、この人がいるからだ。
巧みにパスの距離を変え、頃合いを見ながらサイドチェンジを挟んでいく。そして、隙あらばゴール前に攻め上がり、味方のパスを呼び込んでフィニッシュも狙うのだから、タフである。
それも、守備のハードワークをやったうえでの話。センターバックの手前にへばりついている「不動」のアンカーは少なくないが、岩尾は違うのだ。
徳島の試合を観ていると、あっという間に時間が過ぎていく。相手はもとより、観る側も「休ませない」からだ。それくらい、選手たちが心血注いで戦っている証拠だろう。
インテンシティこそ命綱――。そんな覚悟がある。開幕からの連敗は、プレーの強度を落としたことに一因があった。そこでロドリゲス監督が「それは徳島のアイデンティティではない」と活を入れ、従来の徳島に戻ったら、3連勝である。
笛吹けど踊らず――とは、凡庸な指導者の悩みだが、ロドリゲス監督には選手を「その気」にさせる手腕があるのだろう。これだけ強度の高いサッカーを持続させるのは、決して簡単ではないはずだ。
日本サッカーに必要な要素がすべて揃う
しかも、昨シーズンから内容に結果がついてこないケースもけっこうある。決め手不足だ。確かに渡のゴールラッシュは目覚ましかったが、チーム全体で逃がした決定機の数も山のようにあった。
ただ「ない」ものを嘆いても仕方がない。できることは、ひたすら決定機の数を増やして、当たりが来るのを待つだけだ。言い方は悪いが、数打ちゃ、当たる――である。
実のところ、日本サッカーに必要な要素をすべてそろえているのが、徳島なのではないか。そう思えて仕方がない。妄想ついでに言えば、ロドリゲス監督のような指導者を呼べないものか、日本代表に。
いや、本人にやってもらうのが一番いいのだが……。もちろん、徳島をJ1に昇格させた暁には。いやいや、週末のお楽しみを奪われてはたまらない。あの「鳴門の渦潮」を、いつまでも見ていたいので。