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開幕投手はエースでなくてもいい?
菊池雄星、則本昂大の“内定”に思う。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/02/10 11:30
菊池は2017年に2年連続の開幕投手を務めると、日本ハム打線を抑え込み勝利投手となった。
西武、菊池が乗り越えるべきはソフトバンク。
代表例が、開幕投手を決定したばかりの西武だ。個人的には開幕戦は菊池以外の投手でもいいのかもしれないと思っている。
もちろん、西武のエースは誰が何と言おうと菊池だ。昨季すべての成績でキャリアハイをマークし、投手2冠を達成した。沢村賞候補にも挙げられた菊池が「開幕投手」の大役を3年連続で務めることに異論はない。野上亮磨と牧田和久がチームを去った投手陣において、実力、実績ともに図抜けた存在だ。
しかし、西武がリーグ優勝を目指すうえで忘れてはいけないことがある。
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それは西武の“ソフトバンクアレルギー”だ。昨季はビジターでは1勝12敗。ホームでの戦績も含めても9勝16敗と大きく負け越し、リーグ優勝も本拠地で見せつけられた。なにより、エースの菊池はプロ入り後ソフトバンクに12連敗中なのだ。
そんな天敵を、今年の西武は乗り越えなければならない。
西武の日程を見ると、開幕2カード目の相手がソフトバンクである。さらにその後も、ソフトバンク戦は週の前半に集中している。菊池が開幕戦に登板し、その後もローテーション通り週末の登板が続けば、ソフトバンク戦に登板する機会は少なくなる。スムーズにローテーションを再編できるのは、交流戦やオールスターブレイクといったタイミングしかない。
登板間隔を調整して菊池をソフトバンク戦に先発させる手もあるが、その際は前後の登板で球数やイニングに制限がかかることになる。
西武の目標が3位以内を確保してCSを突破することなら、定石通り菊池が開幕投手でもいいだろう。だがレギュラーシーズン1位を狙うなら、王者ソフトバンクを倒さねばならない。エースの菊池がソフトバンクという壁を乗り越えてこそ、優勝は見えてくるはずだ。
菊池に次ぐ投手を生み出すための働きかけにも。
菊池以外の投手を開幕投手に立てる意味は、もう1つある。それは、菊池に次ぐ先発投手陣の意識への働きかけだ。
菊池は早ければ今オフにも、メジャー挑戦を表明すると報じられている。
そうなった際にエースを誰が務めるかは、今から考えておくべき問題だ。野上らを引き留められなかったチームは、素早い育成のサイクルが必要なのだ。
菊池本人も同じ戦略で成長した。2016年はエース・岸孝之(現・楽天)を得意のソフトバンク戦で登板させるために、菊池に白羽の矢が立った。菊池を育てる意味での開幕投手抜擢は、今思えば成功だったといえる。