フランス・フットボール通信BACK NUMBER
仏の人気博物館がサッカーの展覧会。
それは政治、経済、芸術、人生である。
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byAlain Mounic
posted2017/11/01 08:00
この博物館では……サッカーを巡る世界は、単なる身体運動を超えた文化であり、人生、芸術なのだと位置づけている。
世界中で「神」にも似た存在を示し続けたサッカー。
アルジェリアやイタリア、ヨルダン川西岸地域で集められた、紙や劣悪なプラスチックでできた「意味のないボール」のように、サッカーとは「多くの人々にとってのプルーストのマドレーヌ」に匹敵するものである。
何故ならサッカーは「5歳児にとって最初の誘惑」であるのだから。
世界で最も普遍的なスポーツとしてのサッカーの宗教的側面を象徴する展示物としては、ディエゴ・マラドーナを祭ったナポリの祭壇と、レアル・マドリーとマルセイユ、マンチェスター・ユナイテッドという3つの人気クラブの「キッパ(正統派ユダヤ教徒男子がかぶる帽子)」を見ればいい。
イタリアの詩人で映画監督のピエル・パオロ・パゾリーニが述べているように、「サッカーとはわれわれの時代に最後に残された神聖な表現」なのである。
政治的にも機能していた特別なスポーツ。
またサッカーには、レジスタンスとサバイバルの側面もある。
歴史的資料とビデオがふたつの悲劇的な叙事詩を物語っている。
ひとつは独立のために戦ったイレブンで、1958年に結成されたFLNはアルジェリア独立のために世界中を回って試合をおこなった。
もうひとつがサトゥルニノ・ナバゾで、共和派のスペイン人で反ファシズム運動の闘士だったナバソは、サッカーの能力を認められたことでモウタウゼンの強制収容所をなんとか生き残ったのだった。
「単なるスポーツやゲーム以上の、もっとずっと大きな価値がサッカーにはある」と、展示会の主賓であり、排他的保守主義と戦い続けたパレスチナ女子代表初代キャプテンのハニー・タリジエも語っている。