フランス・フットボール通信BACK NUMBER
仏の人気博物館がサッカーの展覧会。
それは政治、経済、芸術、人生である。
posted2017/11/01 08:00
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph by
Alain Mounic
2013年6月にオープンした「ミュセム(Mucem=ヨーロッパ地中海文化博物館)」は、設立からわずか4年でマルセイユの象徴ともいえる文化施設となった。フランス第2の都市マルセイユでは、文化的・精神的にはフランスという国家よりも地中海世界への帰属意識が強い。ミュセムこそは、マルセイユの人々が心の拠り所とする地中海文化の新たな発信地であるといえる。
『フランス・フットボール』誌10月17日発売号は、パリ・サンジェルマンとのクラシコ(10月22日)を前にしてのオリンピック・マルセイユを大々的に特集している。「チャンピオンへのプロジェクト」と題された巻頭レポートや、過去の名選手バジール・ボリが語るクラシコの思い出などに混じって、さり気なく掲載されているのが10月11日から来年2月4日までミュセムで開催されている「Nous sommes Foot(ヌー・ソム・フット、英語だとWe are Football)」展である。
民衆文化としてのサッカーと、それを表現するオブジェ(芸術作品であるなしを問わず)を並べたときに、いったい何が見えてくるのか――。その奥行きと多様性を、クリストフ・ラルシェ記者が紹介している。
マルセイユに出かけることなどそうそうないだろうが、もし機会があれば皆さんにもぜひ訪れて欲しい。
監修:田村修一
格式高い博物館でサッカーの展示を!?
マルセイユの新名所としてすっかり定着した人気の博物館が、サッカーをテーマに取りあげた展示をおこなっている。「Nous sommes Foot」展はその規模とインパクトにおいて、サッカーというユニバーサルなスポーツが、特別展をおこなうのに相応しいものであることを示したのだった。
「『ミュセムでサッカーを話題にするなんて、正気の沙汰なのか?』と誰もが疑問を抱くだろう」
そう語ったのはジャーナリストで記録映画作家でもあるジル・ペレスであった。
ペレスは来年2月4日までミュセムで開催されている「Nous sommes Foot」展のふたりのコミッショナーのうちのひとりである。「サッカーのステレオタイプを根底から覆す」ことを運命づけられたこの展示は、今やフランス中で大きな話題となっている。