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ウオッカ対スカーレットから10年。
秋華賞の季節に思い出す名勝負。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKyodo News

posted2017/10/14 11:30

ウオッカ対スカーレットから10年。秋華賞の季節に思い出す名勝負。<Number Web> photograph by Kyodo News

その後ウオッカとのライバル対決で牝馬の時代を築いたダイワスカーレット。その記憶は今も鮮やかだ。

ウオッカ&四位が選んだ後方待機という選択肢。

 秋華賞では、ウオッカとスカーレットがどんな枠を引き、互いに内外どんな関係になるのか――といったことまで大きな注目の対象となっていた。

 ウオッカは8枠16番、スカーレットは7枠13番を引いた。

 ウオッカは、スイッチが入ってしまうと一気に行ってしまうところがあった。「この枠だと、前に馬を置きづらいな」と角居調教師は顔をしかめた。

 スカーレットは、どの枠から出てもスピードの違いで先行することになる。「内の状況を見ながらポジションを決められる枠だ。力が抜けているスカーレットもウオッカも揉まれない外枠なのでよかった」と松田調教師は微笑んだ。

 ゲートがあいた。

 2頭とも速いスタートを切った。安藤勝己が騎乗したダイワスカーレットが正面スタンド前でじわっとハナに立ち、内にヒシアスペンを従えて1コーナーへと入って行く。四位洋文を背にしたウオッカは他馬を先に行かせ、後方で折り合いに専念している。

「このレースを勝つためだけなら先行してもよかったんだけど、そうすると、今後抑えが利かなくなる恐れがある」と四位は判断したのだ。

4コーナーで、松田調教師は勝利を確信した。

 2コーナーでスカーレットは2番手に控え、向正面に入った。

 ヒシアスペンの引っ張る馬群は縦長になった。ウオッカは、2番手のスカーレットから15馬身ほど離れたところにいる。1000m通過は59秒2と、平均よりやや速い。こうなると、後ろの馬に有利になるのが普通だ。

 松田調教師は「これでウオッカとベッラレイアはきっちり競馬をするだろうな」と見ていた。が、角居調教師は「ウオッカは道中で動くとスイッチが入ってしまう。このまま行くしかないので、もうちょっと団子になってほしい」と思っていたという。先行するスカーレットの強さが普通ではないことを嫌というほどわかっていたからだろう。

 3コーナーで2頭の差は10馬身ほどに詰まっていた。

 4コーナーを回りながら、スカーレットが持ったままで先頭に立った。ウオッカも外から猛然と追い上げてくる。

 スタンドが大歓声で揺れた。しかし、2頭の差は僅かしか詰まらない。そこで松田調教師は勝利を確信し、角居調教師は敗戦を覚悟した。

【次ページ】 安藤が何度も繰り返した「強い馬です」。

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