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ウオッカ対スカーレットから10年。
秋華賞の季節に思い出す名勝負。

posted2017/10/14 11:30

 
ウオッカ対スカーレットから10年。秋華賞の季節に思い出す名勝負。<Number Web> photograph by Kyodo News

その後ウオッカとのライバル対決で牝馬の時代を築いたダイワスカーレット。その記憶は今も鮮やかだ。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Kyodo News

 秋華賞というと、思い出されるのは10年前の名牝対決だ。

 牝馬として64年ぶりにダービーを制したウオッカ。そのウオッカを抑えて桜花賞馬となったダイワスカーレット。

 この2頭が、2007年10月14日の第12回秋華賞で、桜花賞以来半年ぶりに対決することになったのだ。

 単勝2.7倍の1番人気に支持されたのは、宝塚記念で8着に敗れて以来の実戦となったウオッカだった。前哨戦のローズステークスを勝ってここに来たダイワスカーレットは2.8倍という僅差の2番人気。

「チューリップ賞ではウオッカに負けましたが、臨戦過程や桜花賞の勝ち方から、私が何度『スカーレットのほうが強い』と言っても、ウオッカのほうが人気になってしまうんですよね」とスカーレットを管理した松田国英調教師は苦笑した。

 確かに、直線の短い京都芝内回り2000mというコースは、追い込み馬のウオッカより、先行力のあるスカーレット向きの舞台だった。しかし、5度の直接対決で5度ともウオッカのほうが人気を集めた。

牡馬と戦ってきたウオッカ、牝馬路線のスカーレット。

 この名牝対決をより面白くしていたのは、両馬の背景だった。ウオッカを管理した角居勝彦調教師は調教助手時代、松田厩舎に所属していた。また、ウオッカの父タニノギムレットを現役時代に管理していたのも松田調教師だった。松田調教師にとっては、弟子と、娘を相手に戦っていたようなものだったのだ。

 スカーレットは、2歳時の新馬戦、中京2歳ステークス、3歳初戦のシンザン記念までは牡馬との混合戦を使われたが、その後はチューリップ賞、桜花賞、ローズステークスと牝馬路線を歩んできた。桜花賞の後はダービー、宝塚記念と牡馬を相手にしてきたウオッカとは対照的なローテーションだ。

「力がつき切るまでは、せっかくそうした路線があるのだから、牝馬路線を歩ませたほうがのちのちのためになるんです」という松田調教師の考えによるものだった。

【次ページ】 ウオッカ&四位が選んだ後方待機という選択肢。

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