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小林祐希=ファシリテーター説。
名波の教えと、忘れられない日付。
posted2017/10/17 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
ビジネス用語にファシリテーターという言葉がある。
簡単に言えば会議における進行役、調整役。自分で意見して先導するのではなく、合意形成が主な役割になる。意見をまとめ、周囲の反応を見ながら1つの方向に導くファシリテート能力は、リーダーシップにおいて大事な要素だと言っていい。
サッカーの世界でも、この役割をこなせる人がいればチームはうまく回る。ハリルジャパンのキャプテンを務める長谷部誠は、まさにファシリテート能力が秀でているプレーヤーだ。
10月10日、日産スタジアムで行なわれたハイチ代表との一戦。長谷部不在のチームに、ファシリテーターがいた。長谷部がつけていた背番号「17」だった。
他の選手の位置取りを見て、自分の位置を決める。
代表初先発となった小林祐希は、中盤3枚の右インサイドハーフに入った。
ポジションに捉われずにボールを呼び込んで、あるときはタメをつくり、あるときはワンタッチでスピードアップを促す。効果的なサイドチェンジとギアチェンジを駆使する循環機能は、これまでのハリルジャパンに欠けていたものであった。パスミスをすれば、ファーストディフェンスに向かって自分でケツをふこうとする姿勢もいい。
試合後、彼はこう語っている。
「ニュージーランド戦やほかの代表戦を見ていて、みんな高い位置に入りすぎてスペースがなくなると感じていた。(アンカーに入った遠藤)航の脇の位置や、相手の間、ときには自分が開いたりすることで味方がフリーになればいいと思って動いた」
前半14分には、中盤で乾貴士がボールを受けて前を向いたところで前線との間にスッと入り、ボールを受けるやスルーパスを放っている。相手の間、味方の間をうまく使っていた。