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小林祐希=ファシリテーター説。
名波の教えと、忘れられない日付。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2017/10/17 11:30

小林祐希=ファシリテーター説。名波の教えと、忘れられない日付。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ビッグマウス、俺様、というイメージが強い小林祐希だが、極めて頭脳的で、チームのバランスを意識する選手なのだ。

名波にいわれた「ミニゲーム感覚でやってみろ」。

 同じレフティーで、ビッグマウスから本田圭佑とよく比較されるが、プレーでは己を前面に押し出していくタイプではない。

 味方を活かすことで自分が活きる。これはジュビロ磐田時代、リスペクトする名波浩監督から教えられたものだ。現役時代の名波がまさにファシリテーターであった。

 以前、小林が語ったことがある。

 2015年シーズン途中まで「点を取りたい、アシストしたい、ドリブルしたい、自分の欲ばっかり出ていた」。名波からは「ミニゲーム感覚でやってみろ」と何度も言われてきたが、その意味を分からないままでいた。「ターニングポイントとはっきり断言できる日がある」それが2015年10月11日の練習試合だったそうだ。

「ボールタッチ数を常に(スタッフに)数えられていて、大宮戦(4日)では90分間で29回しか触れなかったのが、その練習試合で30分間中72回触れた。常にボールサイドに顔を出して、味方に『今は慌てるな』とか『勝負しろ』とか声を出しながらやっていくと、最後、自分のところにボールが転がってきた。あっ、これがミニゲーム感覚なんだなって分かった。名波さんから『それだよ。それでいいんだよ』って。以来、自分のプレーというものが全部変わった」

 昨季移籍したオランダのヘーレンフェーンでも周りをうまく動かしつつ、自分を出している。その特長を磨こうとしている印象だ。だがフリーキックの場面では頑として譲らない場面もある。デュエルや守備の読みという新たな特色も身につけた。

 小林は本田でもなければ、長谷部でもない。そして名波でもない。

 一方で我の強さと高い目標設定は本田らしくもあり、流れを読む目や整える力は長谷部らしくもあり、技術と周りを動かせる力は名波らしくもある。

 ターニングポイントと位置づけた日のちょうど2年後。小林祐希は新時代のファシリテーターとして目覚める、その可能性を示した。

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