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筒香嘉智の打点と本塁打を調べる。
「自分で決める」意識こそが大敵?
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byKyodo News
posted2017/10/12 11:00
巨人を抑えて3位でCSに出場したDeNAの中心は、間違いなく筒香嘉智だ。
ホームランも、打点と同じ傾向が見られた。
ホームランについても比較を試みた。ホームランの結果、スコアがどうなったかによって「追い上げ」「同点」「逆転」「勝ち越し」「突き放し」の5つに本数を割り振っていく。
<2016シーズン=44本塁打>
追い上げ:11本 同点:6本 逆転:1本 勝ち越し:10本 突き放し:16本
<2017シーズン=28本塁打>
追い上げ:4本 同点:2本 逆転:1本 勝ち越し:6本 突き放し:15本
打点と本塁打は密接に関わるので当然だが、打点の検証と類似した結果が出ている。ビハインドの場面、つまり「追い上げ」「同点」「逆転」の合計が11本のマイナス。同点の場面、つまり「勝ち越し」が4本のマイナス。その一方で、リードした場面での「突き放し」はほとんど本数が変わっていない。
リードを保ち、プレッシャーのかかりにくい打席では昨シーズンと同等の結果を残せていながら、追いつき、勝ち越さねばならない状況の打席では成績を落とす――。筒香はどの打席にも変わらぬ心境で立っていると常々言うが、それは自分のバットで勝負を決めようとする深層の意識との闘いでもあるのだろう。
使命感の強さゆえ、もどかしさを感じていたのでは。
ホームランがまだ1本しか出ていなかった4月末、筒香に話を聞く機会があった。「チームへの貢献度という意味で、自分に対する歯がゆさはありますか」と尋ねると、筒香は質問で返した。
「それは誰と比べての貢献度ですか」
答えないことが答えだった。その沈黙は、ままならない打撃にもどかしさを感じていることの裏返しなのではないかとも思えた。
8月、打率.315、7本塁打、23打点という月間成績をたたき出し、ついに完全復調かと思いきや、9月には月間打率が.235に落ち込んだ。CS進出争いが本格化し、1つの試合、1つの打席の重みが増した時期、少なくとも数字の上で筒香は苦しんだ。