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智弁和歌山と高嶋仁は死なず。
「人を蹴飛ばしたらあかんので(笑)」

posted2017/08/17 18:00

 
智弁和歌山と高嶋仁は死なず。「人を蹴飛ばしたらあかんので(笑)」<Number Web> photograph by Kyodo News

高嶋仁は毀誉褒貶の激しい監督である。しかし智弁和歌山が強豪であり続ける事実は、彼なしには説明できない。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 まるでサッカーの試合を見ているようだった。

 智弁和歌山は12安打、大阪桐蔭は7安打と、互いに激しく攻め合っているにもかかわらず、外野からのストライク返球で二塁走者が刺されたり、チャンスでいい当たりが正面を突いたり、ダブルスチールを阻止されたりと、互いになかなか本塁を踏むことができない。

 かつて、サッカーのイタリア代表が用いた堅守を誇る戦術をイタリア語で「カテナチオ(かんぬきの意味)」と呼んだが、両チームの壮絶な守り合いは、まさにカテナチオとカテナチオのぶつかり合いだった。

 そんな中1回裏に大阪桐蔭が先制し、4回表に智弁和歌山が1-1の同点に追いつく。ここからまた守り合いが続き、7回裏に大阪桐蔭がワイルドピッチの間に2-1と勝ち越す。智弁和歌山は最終回も1アウト一、二塁と攻め立てたが、2点目が遠かった。

大阪桐蔭と智弁和歌山の勢いの差は明白だが……。

 試合前、智弁和歌山の部長・古宮克人は強気だった。古宮は2006年夏に甲子園で4強入りしたときの1番打者で、キャプテンだった。

――4、5点くらいは、取りたいですか?

「(大阪大会の準々決勝で、大阪桐蔭を相手に9-15と善戦した)興国が9点取ったんですから。10点は取りたいです」

 智弁和歌山、春の王者・大阪桐蔭ともに、全国屈指の攻撃力を誇るチームだ。その両チームによる守り合いは、他の試合にない緊迫感があった。計19安打中、長打こそ二塁打3本だったが、球足の速い単打、あるいは一歩間違えればスタンドに届きかねないファウルや空振りで、4万7000人のファンを酔わせた。

 近年、両チームの勢いの差は明白だ。智弁和歌山は'90年代半ばから2000年代初頭にかけて全国制覇3回、全国準優勝3回を記録。だが、以降はなかなか勝てなくなった。

 一方、大阪桐蔭は2000年代後半に急激に台頭し、ここ10年で計5度、日本一になっている。今、国内でもっとも勢いのあるチームといっていい。

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