松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹の「あと少し」は何なのか。
USGAの警告、4日間、6打差――。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2017/06/20 11:30
全米オープンの2位で、松山英樹の世界ランクは2位に上がった。ビッグタイトルはまだなくても、彼の価値は全く傷つかない。
6番のボギーに揺らがず、14番を終えて2打差。
風、湿気、空気の淀み、そして感触。いろんな要素が絡み合い、狙いと現実にはどうしても誤差が出る。大事なのは、そんな不可避のギャップに惑わされず、踏みとどまり、着実な前進を目指すこと。
その通り、松山は6番のボギーに揺らぐことなく、7番からの4ホールをパーで凌いだ。そして、11番、12番、14番と次々にバーディーを奪い、スタート前の6打差をついには2打差へ。
見せ場は、その先に待ち受けていた。
優勝を争う選手にスロープレー警告が出される時は……。
そう、15番からの上がり4ホールは、松山の強みが凝縮されて開花し、最大の見せ場となった。だが、そこには彼の正念場と目される状況も実はあった。
3番アイアンのティショットが左に曲がり、深いフェスキュー群へ沈んだ15番。
「あそこに行ってしまったのは、すごく残念。レイアップしてパーで行ければ最高かなというところだった」
それがパーではなくボギーになった。さらには、15番の第3打を打つ際に「98秒を要した」として、USGA(全米ゴルフ協会)からスロープレー警告を受けた。
巨大なメディアセンターに集結していた世界のメディアの注目は、その瞬間、「松山vs.ブルックス・ケプカ」から「松山vs.USGA」へ移り、「Again?」の声が方々で上がった。
全米オープンの優勝争いの大詰めでUSGAからスロープレー警告を受け、崩れていった例は少なくない。今は亡きペイン・スチュワートも、その1人だった。昨年大会ではダスティン・ジョンソンが優勝争いの真っ只中でUSGAから1罰打の可能性を告げられ、ホールアウト後に、実際に1罰打を科せられるという前代未聞の珍事が起こった。
「そして今年はマツヤマ?」――欧米メディアの視線は、その1点に集まった。