松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹の「あと少し」は何なのか。
USGAの警告、4日間、6打差――。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2017/06/20 11:30
全米オープンの2位で、松山英樹の世界ランクは2位に上がった。ビッグタイトルはまだなくても、彼の価値は全く傷つかない。
崩れるどころか、「いいところで終われたな」。
だが、メジャー大会でもレギュラー大会でも、優勝争いの中で予期せぬ出来事を幾度も潜り抜けてきた松山である。「16番、17番は急いでプレーした」ものの、崩れるどころか16番ではバーディー、17番はパーで切り抜け、18番はグリーン右のラフからミラクル技のチップで寄せてバーディーフィニッシュ。
何が起ころうとも、ひるまない、揺らがない。強靭なメンタリティと優れた技の融合を見せつけた上がり4ホールは、この日の松山のハイライトだった。
スタート前は6打もあった首位とのギャップをどんどん埋めて、ついに1打へ。
「いいところで終われたな」
安堵の中で、天命を待った。
「ブルックスは本当にいいプレーをした」と祝福。
持てるものをすべて生かし、状況の変化やハプニングにも惑わされず、踏みとどまって、さらに前進。そうやって6アンダー、66の見事なゴルフをメジャー大会の最終日の緊張と重圧の中で実現し、大きく開いたギャップを次々に埋めていった松山。
だがそれと同等か、それ以上のゴルフを松山より元々上位にいたケプカに実現されてしまったら、2人のギャップは最終的には埋まらない。サンデーアフタヌーンは、そんな結末になった。
ケプカにも、心が揺れかけた小さな窮地があった。3パットして初ボギーを叩いた10番からが彼の正念場だった。不安を覚えながらパットした11番、12番。
「でも13番のパーパットを沈めたことが僕の自信を膨らませてくれた。あれが僕のターニングポイントだった」
14番、15番、16番と3ホール連続でバーディーを奪い、松山が必死に埋めたギャップをケプカは開き直していった。それは、もはや松山のコントロールを超えた領域だ。
「ブルックスは本当にいいプレーをしていた」
Hats off(脱帽)――。ケプカの肩をポンポンと叩き、彼のメジャー初制覇を祝福した。