野球善哉BACK NUMBER
生涯賃金を部員に考えさせる野球部。
沖縄・美里工の一風変わった文武両道。
posted2017/05/19 07:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
時計の針は22時を回っていた。
4月27日の神宮球場。春季東京都大会決勝は早稲田実が18-17で日大三高を延長12回サヨナラで下した。ホームラン7発が出る大打撃戦だったが、平日のナイター開催という異例の試合に対して疑問の声が少なくなかった。
早実の清宮幸太郎という高校野球界のスターがいるため、通常使用することが多い神宮第二球場では観客が入りきらない。混乱を避けることも考慮に入れ、神宮球場で執り行うことになった。その日程が平日夜となったわけだったが、18時開始の試合は想像以上に長引くことになった。それを受けて、高校生がこの時間帯までプレーしてよいのかという声が上がったのだ。
高校生の本分が勉学であるということを考えれば、たしかにそこには難しい問題がある。
「生きる力をつけるのが、高校教育の仕事である」
批判者の多くは部活動が教育の一環であることを指摘していたが、今回は早実と日大三というビッグマッチだからこそクローズアップされたというところがある。もし部活と教育の関係を語るのならば、目を向けるべきところは他にもたくさんある。
勉学の暇もない長時間練習、健康リスクのある炎天下での試合、投手の登板過多など、現在の高校野球を取り巻く環境は、教育という観点から見たときに首をかしげる点が複数ある。
本来、高校球児は何を学ぶべきなのか。高校野球に携わる大人たちは、いま一度考え直す必要があると思うのだ。
「生きる力をつけるのが、高校教育の仕事であるという使命感を持っています」
そう語るのは、この春の九州大会でベスト4に進出した美里工(沖縄)の神谷嘉宗監督だ。