野球善哉BACK NUMBER
生涯賃金を部員に考えさせる野球部。
沖縄・美里工の一風変わった文武両道。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/05/19 07:30
選抜出場を果たすと同時に、国家資格も得る。美里工の取り組みは部活と学業を両立した好例だ。
「第一種電気工事士」の資格取得で全国1位に。
資格取得面で目立っているのは「第一種電気工事士」という国家資格での実績だ。美里工は平成26年度、同資格の合格者数が全国1位になった。全校で53人いた合格者のうち、野球部員が30人を占める。ちなみに昨年度も全国3位で、44人の合格者のうち野球部員は26人だ。
甲子園出場やプロ野球選手という夢を追いながら、野球以外の道を歩むための準備もしっかりと進んでいるのだ。
神谷はこう力説している。
「野球をやることで、練習に耐える力やあいさつができるようになってマナーが分かる。また、先輩・後輩の精神が養われるなど、たくさん得られるものがあると思います。でも、それはどこのカテゴリーの野球チームでも教えられること。高校というのは、勉強を教えないといけない。それぞれの学校には特徴があるわけですから、それを教えないと高校教育ではありません。高校野球として、やるべきことがある。15~18歳までの一番の思春期の子どもたちですから、3年間で彼らはいかにも変わる。高校で頑張った子たちは一生、頑張るでしょう」
甲子園に行った代償として、将来何もできない人間になったら、何のために高校に通うのか分からない。「親としてもそれは望んでいないでしょう。甲子園は通過点として、将来に生きる力をつけてほしい」と神谷は断言している。
神谷のいう「生きる力」を今の高校球児は養えているのだろうか。