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メッシと同時代を生きる幸福と不幸。
誰を見ても「でもメッシの方が……」。 

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北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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posted2017/05/04 11:00

メッシと同時代を生きる幸福と不幸。誰を見ても「でもメッシの方が……」。<Number Web> photograph by AFLO

メッシが世界最高の選手の座について、もう10年近くが経った。しかしメッシがいなくなっても、サッカーは続いていくのだ。

サッカーほど布陣が複雑怪奇なゲームも少ない。

 ポジションは11を数え、各々に求められる役割も多種多様。従って、誰が凄いか、という楽しみ方もポジション(役割)の数だけ広げることができる。それらをひっくるめたものが、ベストイレブンだろうか。史上最高のフットボーラーは誰か――という問いを立てたところで、メッシ以外にペレとマラドーナの名前が挙がるくらいだろうが、史上最高のベストイレブンとなれば話は変わってくる。突然、史上最高の右サイドバックは誰か、と問われて即答できる人は少ないだろう。

 そもそも右サイドバック不在のベストイレブンも成立してしまう。サッカーほどフォーメーションが複雑怪奇なボールゲームも少ない。ポジションの数は11でも、それをどう配置しても構わないからだ。4-4-2、4-2-3-1、4-1-4-1、3-5-2、3-4-3、3-4-2-1などと数え上げて行けばキリがない。しかも、同じ4-4-2でも戦術が異なれば、まるで違うチームに見えることもある。

 余談ながら、フォーメーションが同じでも戦術の異なる2チーム同士の戦いは厳密には「ミラーゲーム」とは呼ばないわけだ。

メッシ抜きでスペインは優勝し、アルゼンチンは……。

 メッシのような当代随一のタレントがいないチームでも、頂点を極めるチャンスが十分にある。それもまた、サッカーの面白さだろうか。2010年の南アフリカ・ワールドカップを制したスペインは「メッシのいないバルセロナ」のようなチームだった。逆にメッシを擁するアルゼンチンはワールドカップでも、南米最強国を決めるコパ・アメリカでも優勝していない。さらに小が大を食うジャイアントキリングを目にする機会が少なくないのも、サッカーならではの醍醐味かもしれない。

 それこそ「強い者が勝つ」という不思議でも何でもない、予定調和のオンパレードでは退屈すぎるという向きには、もってこいの娯楽だろうか。俗に「勝ち組」と呼ばれる強者ばかりを利する世の中の仕組み(格差拡大)に不満を溜めている層にも、ジャイアントキリングは少しばかりのカタルシスを提供してくるかもしれない。昨シーズン、並み居る強者を出し抜いて、プレミアリーグ(イングランド)の頂点に立った『レスターの乱』は、その好例だろう。

【次ページ】 「メッシ至上主義」はすべての世代が一度は通る門。

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