Jをめぐる冒険BACK NUMBER
代表のためにスタイルは変えない。
西川周作は浦和式でつなぎ続ける。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2017/04/07 07:00
西川周作の目指すGK像と、ハリルホジッチの求めるGK像は違う。その溝を超える程の絶対能力を身につけるしかない。
セーフティーを望むハリル、リスクを好むミシャ。
西川の立場を難しくしているのは、日本代表と浦和レッズの志向するスタイルがまるで異なり、それぞれの指揮官がGKに求めているものも、異なっていることだろう。
「ヴァイッドとミシャ(ミハイロ・ペトロビッチ監督)の求めることはちょっと違っていて、ヴァイッドはGKがリスクを冒して失点することをすごく嫌うんですけど、ミシャはミスを恐れるなと。積極的に飛び出して、それでダメでも全然オーケー。怖がる気持ちだけは持つなと言ってくれます」
攻撃的なスタイルを標榜するペトロビッチ監督は、GKがリスクを負って攻撃の起点となるパスを繰り出すことを奨励し、高く保ったディフェンスラインの背後を狙われた際のカバーリングもGKに託している。
GKにリスクを冒させることで、何試合かに1度かは失点を喫する可能性もあるが、それを補って余りあるほど、攻撃で恩恵が受けられるということを、ペトロビッチ監督は信じている。言うなれば、ハイリスク・ハイリターンだ。
身長183cmと決して大柄ではない西川も、フィールドプレイヤーを上回るほどにキックの精度を磨いたり、ペナルティエリアの外へと果敢に飛び出してプレーエリアを広げたりすることで、そうしたハンデを補ってきた。
「ミシャのもとでプレーするようになって、自分のプレーの幅は間違いなく広がりましたね」と西川は感謝する。攻撃面での貢献は、西川にとってアイデンティティであり、存在意義でもあるのだ。
「自分のスタイルを変えるつもりはない」
代表とクラブによって求められるものが異なる場合、それぞれのスタイルに合わせるという考え方もある。
だが、西川にそのつもりはない。
「ヴァイッドも、全部が全部ダメっていうわけではなく、僕のスタイルを尊重してくれている。そのことは、これまでのコミュニケーションの中で感じられたし、実際にこれまでも起用してくれていた。だから、自分のスタイルを変えるつもりはないです。自分の良さを消して試合に出るのは一番やりたくないですし、チームのためにもならないと思う。僕は自分の良さを出しながら、つなぎのミスを減らし、ヴァイッドの求めるゴール前での安定感も出していきたいと思っているんです」