Jをめぐる冒険BACK NUMBER
代表のためにスタイルは変えない。
西川周作は浦和式でつなぎ続ける。
posted2017/04/07 07:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFLO
スターティングラインナップには、ちょっとした異変が起きていた。
3月23日に行われたロシアW杯アジア最終予選。アウェーのUAE戦で日本のゴールマウスに立ったのは、前年6月以来、実に9カ月半ぶりのスタメンとなる川島永嗣だった。
これまで最終予選の全試合で日本のゴールを守り抜いてきた西川周作の姿は、ベンチにあった。
所属クラブで出場機会を得られていない川島を、大一番のスタメンに選んだヴァイッド・ハリルホジッチ監督の決断には驚かされたが、しばらくして別の驚きが生じてきた。
ホームで1-2と敗れ、これ以上にない屈辱を味わわされた日本にとって、UAEは絶対に叩かなければならない相手だった。
その試合でセットプレーから2失点を喫した西川にとっても、この試合はリベンジを果たす機会となるはずだった。それなのに、肝心のゲームで控えに回されてしまったのだ。
にもかかわらず、試合前日のミックスゾーンで西川は、自身がスタメンでないことを察していながら、いつもと変わらぬ様子で笑顔すら覗かせて、メディアの質問に応じていた――。それが、西川がスタメンではないということを知ったときに生じた、別の驚きだった。
「自分に足りないところがあるから出られない」
浦和レッズの練習場でそのことについて訊ねると、「ハハハ、うまく騙せましたかね」と屈託のない笑顔を見せて、西川が言葉を紡いだ。
「もちろん、悔しかったですよ。1年間、代表のゴールを守ってきて味をしめたからには『このままずっと』っていう想いもあったし、UAE戦は僕にとってもリベンジでしたから。それに、ホームとアウェーとでは雰囲気もまるで違う。そうした中で、ちょっとしたワンセーブで流れが変わるっていう経験もしたかったですし」
そう語ると、ひと呼吸置いてから、さらに思いの丈を吐き出した。
「でも、自分の役割は理解しているし、昔から、出られないときの立ち居振る舞いを大事にしようと思っていて。GKは試合に1人しか出られないし、それを決めるのは監督ですから、その判断に対して怒りを覚えることはまったくない。自分に足りないところがあるから出られないわけで、人のせいにするのは簡単ですけど、それは一番やりたくないと思っているので、すぐに受け入れられました。自分がどうしないといけないのか、道は見えていて、答えが分かっているからこそ、割り切れたのかなと思います」