Jをめぐる冒険BACK NUMBER
代表のためにスタイルは変えない。
西川周作は浦和式でつなぎ続ける。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2017/04/07 07:00
西川周作の目指すGK像と、ハリルホジッチの求めるGK像は違う。その溝を超える程の絶対能力を身につけるしかない。
西川が控えに回る予兆はあった。
振り返ってみれば、西川が先発の座を譲る予兆は、たしかにあった。
UAE戦の会場となったアル・アインのハッザーア・ビン・ザーイド・スタジアムは昨年11月に行われたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝の舞台だった。
韓国の全北現代を迎えたアル・アインのホームゲームは、白装束をまとった男たちによってスタンドが埋め尽くされ、異様な雰囲気に包まれていた。
その試合映像を見たというハリルホジッチ監督は、「かなり凄い雰囲気だった。スタジアムは狭く、選手たちが観客からのプレッシャーを受けやすいように感じた。われわれとの試合でも同じような雰囲気になるだろう」と警戒心を強め、「こうしたゲームでは経験が必要になる」と強調していた。
川島にはW杯で2度プレーした経験があり、予選におけるアウェーの大一番でゴールを守った経験もある。しかし、西川にはない。
今季、レッズはリーグ戦で1度も完封勝利がない。
さらに、UAE戦の1週間前に開かれたメンバー発表会見で指揮官は「西川はまだトップコンディションにないようだ」とも語っていたのだ。
シーズンが開幕してすでに1カ月、西川が「トップコンディションにない」ということはないだろう。指揮官の発言を、西川はこう受け止めている。
「僕自身には、そういう(トップコンディションにないという)感覚はないんですけど、ヴァイッドはシンプルな人なので、失点に絡んでいたり、無失点試合がなかったりするところを見て、そう言ったんじゃないかなと思います」
西川が言うように、今シーズンの浦和レッズはリーグ戦でまだ1度も完封勝利を収めていない。さらに、3月15日のACL上海上港戦では、ペナルティエリアの外に飛び出した西川のキックが相手にわたり、無人のゴールに蹴り込まれてしまった。単なるクリアではなく、味方につないでカウンターを狙ったがゆえのミスだった。
「逆に言えば、そこを修正すれば印象も変わると思います。だから、自分としては落ち着いているし、悔しい思いをして自分がさらに強くなれたと感じるので、今は早く試合がしたいんですよ」