マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
センバツを関西勢が席巻する予感。
智弁の西岡、滋賀の田中は隠れ逸材。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/03/16 17:00
智弁学園、太田英毅は2016年の優勝チームでも主力だった。彼のスイングは、一目でそのパンチ力が伝わる。
センバツの頃は、椎間板ヘルニアだった。
昨秋の近畿大会。
試合開始直前にダグアウト前でスイングをする選手たちの中で、“おとな”のスイングをする左打者がいた。
太田? ……いや太田は右だ。福元も。
じゃあ誰だ?
関西の事情に詳しい人に訊いたら、センバツVのあの頃は、椎間板ヘルニアで野球どころではなかったそうだ。知らないはずだ。
全身で振れるのがいい。足首の回転を起爆剤にして、上へ上へと巻き上げていく全身の連動がすばらしく、軸の回転にバットが勝手に振られている。そんな印象。打者も投手も、人より頭ひとつ抜きん出た選手は、バットを振る腕やボールを投げる腕に“力”を感じない。
腕を軽い感じで振り抜いて、それなのに、打球、投球にアッと驚くほどのスピードが乗っていく。そんな“おとなっぽさ”を、秋の西岡寿透のスイングは発散していた。
最初の打席で勢いに乗ったら爆発するかも。
あとは、実戦力だ。
実戦に参加するようになったのは昨秋からだ。経験のなさは心の余裕を消し去って、あとから、「なんであんなボールを……」、そんな後悔を生むことが多いものだ。
秋の近畿大会は、ちょっとしたパニック状態に陥っていたように見えた。でも、絶対そんなもんじゃない。
きっかけは、最初のひと振りだ。
今春のセンバツも、もし最初の打席で快打を放ったら、その日はドーンと爆発してもぜんぜんおかしくない。
たとえば、1試合3ホーマー。2発に終わっても、それが3ランに満塁弾。とんでもない爆発力で、一気に“全国”に躍り出ても、「ああ、やっぱりね」となる。
そんなことが起こっても、彼には“当たり前”の結果なのである。