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「ミスした時ほど平常心でいろ」
戸柱恭孝、DeNA1年目で得た逞しさ。 

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byNaoya Sanuki

posted2016/12/16 07:00

「ミスした時ほど平常心でいろ」戸柱恭孝、DeNA1年目で得た逞しさ。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

井納ら多くの投手を1年目から取りまとめた。戸柱の成長はベイスターズ躍進の一因であることは間違いない。

最下位になったことで、心と体が一致した?

 やっと入ることのできたプロ野球の世界、「気がつけば開幕戦のフィールドに立っていた」と振り返るほど、めまぐるしく時間が流れていった。

 しかし、早々に試練にぶつかった。春先からチームは下位に低迷し、自身のミスで足を引っ張る試合もあった。

「正直、しんどかったですね。こんなに厳しい世界なんだと……。いままで落としたことないのにキャッチャーフライが捕れなくなって、当たり前にできていたことができなくなっていった。でも、負けず嫌いなんで。『こいつ、もうダメだな』って思われたらカッコ悪いじゃないですか。それだけは嫌で、割り切ることにしたんです。最下位でしたし、言い方は悪いですけど、もうこれより下はないんだって。そこからですね。自分の感覚が変わって、心と体が一致したというか」

「ミスした時ほど平常心でいろ」というコーチの言葉。

 プロの世界を歩み出したばかりの戸柱の背中を押したのが、バッテリーコーチの光山英和だった。

「誰が発したものでもいい。シーズン中、最も心に残っている言葉はどんなものですか?」と問うと、戸柱は光山の一言を選んだ。

「『ミスした時ほど平常心でいろ』という言葉ですね。ぼくにとってはものすごく大きな言葉だった。『いや、ミスしてへんし』って気持ちになれたし、あたふたしなくなりました。その言葉でさらに吹っ切れました」

「想像以上の1年だった」という充実感とともに、プロのレベルの高さと自らのいたらなさも思い知らされた。戸柱は言う。

「(打者は)みんなすごいですよ。特に一軍の主力メンバーは。CSでも坂本(勇人)さん、(田中)広輔さんにスカンスカン打たれて、最善の手をすべて打ったつもりでも止められなかった。ぼくがいちばん印象に残ってるのは巨人の村田(修一)さんですね。一時期、『何投げたらいいんやろ?』っていう感覚になったほどでした。まだ答えは見つかってませんね……」

【次ページ】 打率.226、2本塁打、23打点……厳しい自己評価。

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