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「ミスした時ほど平常心でいろ」
戸柱恭孝、DeNA1年目で得た逞しさ。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/12/16 07:00
井納ら多くの投手を1年目から取りまとめた。戸柱の成長はベイスターズ躍進の一因であることは間違いない。
打率.226、2本塁打、23打点……厳しい自己評価。
自身の残した数字にも、厳しい自己評価を下す。
「傍から見たら、打率(.226)低っ! ホームラン2本で打点23、少なっ! みたいに絶対思われると思うんですよ。キャッチャーなんだから十分やった、1年目でよく頑張ったっていう人もいるかもしれませんけど、ぼくはほんとにそれが嫌なんです。1年目だからって関係なく、野球選手なので」
シーズンの大半の試合に出場しながら、戸柱は一度もヒーローインタビューに呼ばれなかった。負けて非難の矢面に立ち、勝って手柄を仲間に譲る。報われないポジションにも思えるが、戸柱は「それでいいんです」と静かに語る。
「そういう世界でずっとやってきましたから。打たれたら自分のせいだと思うし、ピッチャーが悪いとは絶対に思わない。ヒーローインタビューも、ピッチャーに『俺の名前言って!』とか冗談で言いますけど、お立ち台に上がらなくても評価してくれる人はいると思う。だから試合が終わった後なんかに、陰でぼそっと『今日はトバのおかげだよ』って言われるだけですっごくうれしくなっちゃうんです。ちゃんと見てくれる人がいるってだけで十分です」
「筒香の負担を少しでも減らせるようにしたい」
11月の秋季キャンプでは、ルーキーながら、倉本寿彦、白崎浩之、飛雄馬と同学年で、すでに野手最年長。自分がチームを引っ張っていく、その思いの強さは入団時と変わらない。
「キャッチャーですし、試合にも多く出たわけですから、そこはキャンプ初日から意識していました。来年は自分のこともですけど、それ以上にチームのためを思って行動したい。今年はゴウ(筒香嘉智)ひとりで背負っていたので、少しでも負担を減らせるようにしたいと思っています」
27歳になる来季も、チームのために黒子に徹する覚悟だ。