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DeNA、奇跡の4連勝に必要なこと。
打線の“怖さ”を意図的に作り出せ。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/10/14 12:40
44本塁打、110打点の二冠王・筒香嘉智の存在は、DeNAにとって数字以上に大きい。圧倒的不利の雰囲気を一振りで変えることができるか。
犠打5つ、進塁打5つという“つなぎ”が広島の怖さ。
打ち勝つ野球が望めない現状で、ベイスターズはどんな戦い方を選択すべきなのか。
そのヒントは、目の前の敵が教えてくれているのではないだろうか。
カープの1番打者、田中広輔は8打席中7出塁、6打数5安打と絶好調だ。だが第2戦ではチーム4安打(うち田中が2安打)という成績も示すとおり、カープ打線全体が手をつけられないほど活発なわけではない。
それでも、赤い軍団の攻撃には怖さがつきまとう。その正体は、シーズン中と変わらぬ徹底した“つなぎ”の実践だ。
2試合でカープが記録した犠打は5つ。またバント以外に、凡打でも結果的に進塁打になったケースが5度あった。たとえば第2戦の3回には、四球、ワイルドピッチ、バント、犠牲フライと、ノーヒットで貴重な追加点をあげている。走者がじわりじわりとホームに近づいてくるところに、カープ打線の怖さがあるのだ。
一方のベイスターズは、この2戦で一度もバントをしなかった。進塁打となる打球が飛んだのも2度だけ。その結果、四球や失策も加えてのべ14人の走者を出したが、得点圏に進めたのはわずかに3人だった。
筒香やロペスが不振に陥った結果、豪快な一発攻勢の怖さもなければ、カープのように1つずつ塁を進める怖さもない、ということだ。
得点圏に走者を送って、意図的に“怖さ”を作れ。
ならば、第3戦以降の戦い方として、ベイスターズにできることとは何だろうか。
それは先に挙げた2種類の怖さのうち、選手や首脳陣にコントロールできるものに注力することだろう。
長打を打て、ホームランを打てと言ったところで、その打席で打てるかどうかは分からない。打てるように最善の努力を尽くすのは当然だが、その時々の結果は「コントロールできないもの」と考えるべきだ。
だが進塁による怖さの演出は、ある程度、それぞれの技量や意識で「コントロールできること」の部類に入るはずだ。もちろんケースバイケースながらも、犠打や進塁打で得点圏に走者を置く状況を可能な限り多くつくること、つまりは意図的に“怖さをつくる”ことが得点への近道になるのではないだろうか。