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アズーリ新監督は“経験不足の老将”。
優先すべきは才能か、システムか? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2016/10/07 11:00

アズーリ新監督は“経験不足の老将”。優先すべきは才能か、システムか?<Number Web> photograph by AFLO

かつて栄華を誇ったイタリア代表監督としては地味すぎるベントゥーラ。“扱いやすい監督”だけで終わる気は毛頭ないと思われるが……。

ベントゥーラは慌てて4-2-4採用を表明も……。

 サッキには「ゾーンディフェンスを理解できまい」という先入観から名DFベルゴミを同大会に招集せず、後に後悔した経験もある。米国W杯での優勝を逃して20年以上が経った今、当のベルゴミからは新代表監督へ具体的な忠言がなされた。

「トリノ時代のベントゥーラは、3トップ専用ウイングと見なされていた愛弟子チェルチをセカンドトップへと見事に転身させたではないか。ベラルディにも同じことを試すべきだし、招集して彼にフル代表の空気を感じさせるだけでも必ずプラスになる」

 名将アンチェロッティ(バイエルン)も、かつてパルマでの駆け出し指導者時代に4-4-2へ固執するあまり、“小さな魔術師”ゾラを構想から外した。「私は愚かだった」と後にアンチェロッティは過ちを認め、自身も監督となった名手ゾラはこう提言した。

「トッププレーヤーの少なくなった今のイタリアに、ベラルディのような並外れた才能の持ち主を外す選択肢はない。彼ほどのFWなら3-5-2にも必ず適応できる。ベントゥーラは考えを改めるべきだ」

 各方面から総スカンをくらった新監督は、慌てて「誤解だ」と弁明。3-5-2から4-2-4への戦術的発展と、それに伴ってサイドアタッカーたちを試す考えを示し、年内の代表特別合宿と来年6月のテストマッチでの招集を匂わせるに至った。

40年の指導者歴、渡り歩いたクラブはなんと18。

 代表監督の有力候補として、ベントゥーラの名が上がったとき、正直耳を疑った。10年前にシチリア島の片田舎で取材していた凡庸な指導者が、後にイタリア代表監督に就任するなど夢にも思わなかったからだ。

 ベントゥーラの指導者歴は40年に及び、渡り歩いたクラブは18になる。

 ドイツW杯を控えた'06年の晩冬、当時シチリア島でプレーしていたFW柳沢敦は古巣・鹿島へ帰り、すでに半壊していたメッシーナの敗戦処理監督として雇われたのがベントゥーラだった。

 采配を振るった終盤の7試合は1勝6敗、散々な有様で立て直しに失敗した。何度か取材した記憶はあるが、今も“昼行灯”という印象しか残っていない。

 表舞台から姿を消したと思っていたら、'09年に昇格組バーリの躍進で返り咲き、その後呼ばれたトリノでも有能な若手たちを世に送り出した。

 21歳のときに2部ピサで抜擢され、バーリでも重用されたDFボヌッチ(現ユベントス)は、今や欧州随一の名スイーパーになった。FWインモービレ(現ラツィオ)はトリノで薫陶を受けた3季前に24歳でセリエA得点王を獲った。彼らはベントゥーラに足を向けて寝られないはずだ。

【次ページ】 ベントゥーラの年俸はコンテの半分以下。

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