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イラク戦直前、香川真司インタビュー。
アジア最終予選2戦の課題とこれから。
posted2016/10/04 17:00
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
AFLO
その日、取材現場に現れた香川真司は思いの外、朗らかだった。スタッフと雑談を交わし、いくつもの要求にてきぱきと応えていく。笑いも交えながら、テンポ良く取材は進んだ。
思いの外と表現したのは、言うまでもない。現在、香川の立たされている状況はなかなかに厳しいからだ。
ブンデスリーガ第6節までで先発は1回、途中出場が2回、ベンチ外も1回。第2節まで終了した欧州CLではベンチ外1回、ベンチに座ったが出場なしが1回。バイエルン相手のスーパー杯でこそ1回先発出場したが、格下相手のドイツ杯1回戦は除いて、今季合計9試合のうち先発はわずかに2度ということだ。比べると昨季は第14節まで連続して先発出場しており立場はまったく違う。さらに遡り、最も苦しかった14/15シーズン冒頭。夏の移籍期限終了間際に、リーグ戦で出場チャンスが皆無だったマンチェスター・ユナイテッドからドルトムントに復帰したわけだが、プレー機会がないとはいえリーグ戦はわずかに第3節終了時点での移籍だった。もちろん単に数字上の比較ではあるが、当時と変わらないかそれ以上の苦境、というのが客観的な現状だ。
もともと「僕は割に気にするタイプ」と言い、精神的なリカバリーに比較的労力を要してきた香川が、この苦しい状況の今どんな表情で現れ、何を話してくれるのだろうか。
「落ち込む必要はないですね」
――最近の調子は、どうなのでしょう?
「試合に絡んでないので……調子って試合で判断することなので、説明するのは難しいです。ただ、日頃からぶっつけ本番でも試合に臨めるようにと思って、チーム練習、個人トレーニングをやっていますね」
――落ち込んでなんかいられないぞ、と。
「落ち込む必要はないですね。逆にドルトムントでのこの1カ月間は苦しさというのはほぼありません。もちろん試合に出られないフラストレーションは一瞬の感情として誰もがあると思うけど、それも一瞬だけ。自分の中で切り替えて、次の試合に向かっている。今の(ドルトムントの)チーム状況を考えたら、この流れは新加入の選手がつかみ取ったもので、トゥヘル監督がそういう流れを崩さないということも去年から重々把握しているし。裏を返せば自分が出た時に結果を残せば、また自分のターンになってくるので、ポジション争いは激しいと思いますが、シーズン始まって1カ月ですし、考える必要ないかなと」