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アズーリ新監督は“経験不足の老将”。
優先すべきは才能か、システムか?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/10/07 11:00
かつて栄華を誇ったイタリア代表監督としては地味すぎるベントゥーラ。“扱いやすい監督”だけで終わる気は毛頭ないと思われるが……。
ベントゥーラの年俸はコンテの半分以下。
9月に敵地ハイファで行われたイスラエルとのW杯予選初戦では、DFキエッリーニの退場で10人となったが司令塔ベラッティ(パリSG)とFWインモービレなどの活躍で3-1の快勝を収めた。
途中出場で守備固めに貢献したDFオグボンナ(ウェストハム)に加え、FWベロッティ(トリノ)といった近年の教え子たちにも、今後チャンスが与えられるにちがいない。
EURO2016でのスペイン撃破は、チームを鍛え上げ、闘う集団にした前監督コンテの功績が大きい。
優秀だった分、クラブレベルの高年俸を要求したコンテに比べ、新任ベントゥーラの年俸は半分以下だ。
闘将ほど苛烈な性格でもなく厄介な注文が多いわけでもない。イタリアサッカー協会のタベッキオ会長が、ベントゥーラへ白羽の矢を立てた理由は、何より御しやすさではなかったか、と勘ぐりたくもなる。
新指揮官の最大の懸念は、国際経験がほぼないこと。
実は、この夏に28歳年下の相手とゴールインしたばかりの新婚でもあるベントゥーラへの不安は、短い現役時代にも指導者としても、国際経験がほとんどゼロに等しいことだ。チャンピオンズリーグの緊張感も知らず、国内でのタイトル獲得歴もない。
早くも露呈した選手招集への偏りや国際経験不足と合わせて、伝統国イタリアにもロシア行きを逃す危険性がないとは言い切れない。
不運にも、ベラルディは9月に続いて筋肉系の故障で今回も招集はお預けだが、EUROでの雪辱を果たしたいスペインになすすべなく敗れるようなことがあれば、サッスオーロのエースFWを筆頭とする若手サイドアタッカー待望論が再燃するのは間違いない。
ヒト(選手)が先か、入れ物(戦術)が先か。
W杯予選が進むにつれて、イタリア代表をめぐる旧くて新しい議論も深まっていくだろう。