オリンピックへの道BACK NUMBER
日本チームの命運を握る初日・柔道。
他競技も注目の高藤直寿、近藤亜美。
posted2016/08/03 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
真の意味で復権なるか。
ロンドン五輪で、日本柔道界は男女を合わせて金メダル1つに終わった。常に金メダルを期待され、また金メダルを目標としてきた日本柔道界にとって、屈辱の大会だった。
その後、新体制のもとで世界選手権など国際大会で着実に結果を積み重ねてきた。ただ、オリンピックの借りを返せるのは、オリンピック以外にない。
リオで巻き返すためにも、初日に行われる男子60kg級、女子48kg級の結果が日本チームの雰囲気を大きく左右する。
男子の60kg級には高藤直寿、女子48kg級には近藤亜美が出場する。ともに初めてのオリンピックだ。
高藤は、早くから将来を嘱望される存在だった。中学生のときに全国大会を制し、高校時代は世界ジュニア優勝、シニアの大会でも上位に入る活躍を見せた。
大学2年生の2013年には、1997年の野村忠宏以来となる世界選手権60kg級で金メダル。翌年の世界選手権では、準決勝で地元ロシアのムドラノフとあたり、ポイントの格下げや取り消しが相次ぐ疑惑の判定で敗れたものの、強さを示して終えている。
高藤の魅力は、「誰も真似することができない」とも言われるスタイルにある。具体的には、日本代表男子監督の井上康生氏も認める「勝負勘と対応力」である。相手の動きにとっさに反応し、多彩な技を繰り出すところに高藤の魅力がある。
精神面、成績面の不安定さを克服。
一方で、精神面が課題としてあった。2014年の世界選手権では結果に納得が行かなかったことから代表チーム内の規律違反を繰り返し、処分を受けた。成績でも安定感に欠ける傾向があった。昨年は全日本選抜体重別選手権の初戦に敗れるなどして、世界選手権代表を逃している。
その反省からか、食事の管理など日常から見直している。変化を印象付けたのは昨年12月のグランドスラム東京だった。ムドラノフと決勝であたると、合わせ技一本で快勝。涙を流した。
晴れてリオデジャネイロ五輪代表に選ばれた高藤は、「必ず金メダルを獲ります」と抱負を口にしている。
自身が初日に登場する立場であることも自覚している。
「自分の結果で、続く選手たちも変わってきます」
高藤が金メダルを獲れば、日本男子にとって8年ぶりの五輪金メダルになる。