熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER
「プレッシャーのない仕事などない」
最下位・湘南の曹監督、奮起の言葉。
text by
曹貴裁Cho Kwi-Jae
photograph byShonan Bellmare
posted2016/05/18 12:00
攻撃の形は試合を重ねるにしたがって良くなっている――あとは、僅差での負けを勝ちに変える最後のひと押しなのだが……。
「自分たちのサッカーってこういうものだよな」
●5月12日(木)
今日も攻撃に重点を置いた練習。当然だけど普段よりゴールがたくさん生まれるようになったし、シュートを打つ場面も多くなった。選手も手応えを得ていうように思えるし、それは福岡戦に臨むためというより「自分達のサッカーってこういうものだよな」という感触を得たことが良かった。
チームには勝っている時も負けている時も同じように課題は存在しているけど、負けてそこがクローズアップされがちだからといってそこへの対策に傾倒すると、チームとしてどこかつぎはぎな感じになってしまう。やっぱりメインは自分達のサッカーを突き詰める練習をする、そういうことに特化して練習を組みたいと思っている。
●5月13日(金)
試合前日の今日は、福岡への対策、そしてセットプレーの確認を行った。よく「セットプレーでやられたら仕方がない。オープンプレーじゃないから力の差じゃないよ」と言われることを聞くけど、僕は全く違うと思っている。今ドイツでは専門のコーチがいるように、セットプレーがサッカーの要素の一部であればそこを突き詰めることも大切。
今年12試合を戦い、我々は20失点でワーストワンだが、実はセットプレーでの失点はCKでの1点とPKでの2点の計3点だけで、これはリーグの中でも少ない。当然だけど毎試合相手チームの弱点、長所、傾向を分析する中で、福岡さんに関しては得点の7割近くがセットプレーであること、またここ2試合はセットプレーでの失点が増えていることがわかっている。だからおそらく攻撃に関しては絶対に取ろうと、守備に関しては絶対にやられてはいけないと意気込んでくる。そういう相手に対して、守備での対策を講じ、かつ詳しくは言えないけれど99%は成功するだろうという攻撃のパターンを2つくらい用意した。
自分たちの集中力を維持し、相手の集中力を低下させるためにどんな策を取るか。セットプレーを大事にするのは今年だけの話でなく、ソリさん(反町康治前監督・現松本山雅FC監督)が監督になってから7年間、湘南として培ってきた湘南スタイルの伝統でもある。これは今後も続いていって欲しいし、セットプレーで分かつ勝敗には力の差が存在するということは選手とも意識を共有してやっている。
攻撃を意識して準備した3日間、チームにまた攻撃的なエネルギーが宿った感じがしている。勝てていない、順位が上がらない中でミスを恐れてプレーしてしまいがちだが、チームとしてはミスをすることよりミスを恐れてボールを受けなくなったり逃げてしまうことの方が問題だ。福岡戦は選手がそうならずに、挑戦する気持ちを持って臨んでくれると感じている。