ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
いま、Jr.ヘビー級が世界的ブーム!
原点は獣神サンダー・ライガーに。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byEssei Hara
posted2016/05/18 10:40
KUSHIDAは中学から高田道場に入門し、大学時代は東スポでアルバイトしていたまさに「ド真ん中」のプロレスラーだ。
新エース・KUSHIDAの最大の壁、ライガー。
そんな“ジュニアの夏”に先駆けて行なわれたのが、5月3日、新日本プロレス『レスリングどんたく』(福岡国際センター)での、KUSHIDAvs.獣神サンダー・ライガーのIWGPジュニアヘビー級タイトルマッチだ。
長年、新日本ジュニアを牽引してきたライガーが、現王者KUSHIDAに挑戦した新旧ジュニアエース対決は、熱戦の末にKUSHIDAが得意のホバーボードロックでギブアップ勝ち。
IWGPジュニア王座4度目の防衛に成功したが、この試合はKUSHIDAにとって、これまでの防衛戦とは違う、特別な意味があった。
自分こそが、新時代のジュニアヘビー級シーンを本当の意味で引っ張っていく存在となる。そんな決意を表明するために、どうしても必要な一戦、どうしても越えなければならない相手。なぜならライガーこそが、現在のジュニアヘビー級ムーブメントの原点を作り上げた、リビングレジェンドであるからだ。
「生涯ジュニアヘビー」を貫く象徴的存在。
ライガーはプロレス界初の東京ドーム大会である、'89年4月24日の新日本プロレス『格闘衛星・闘強導夢』でデビュー。その日からこんにちまで、じつに27年間ものあいだ、“ジュニアの象徴”として君臨し続けてきた。
ライガーがそれまでのジュニアトップ選手たちと違ったのは、自分の身体の小ささを理解し、初めから「生涯ジュニアヘビー級レスラー」を貫く覚悟を持っていたことだ。ライガー登場前のジュニアヘビー級は、“ヘビー級より軽い階級”という意味合いよりむしろ、スポーツにおけるジュニアオリンピックのような、将来のトップ選手候補となる若い選手たちの闘いという意味合いの方が強かった。
だからこそ、藤波辰巳、高田延彦、越中詩郎、馳浩、ザ・コブラら歴代のジュニア王者たちは皆、のちにヘビー級に転向。例外は王者のままプロレス界を去った初代タイガーマスクぐらいのもの。レスラーたちにとって、ジュニアヘビー級はいつかは卒業する通過点でしかなかったのだ。
しかし、生涯ジュニアヘビー級レスラーであるライガーに卒業はない。だからこそ、ジュニアヘビー級の“地位向上”こそがライガーのライフワークとなったのだ。