猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス・田口壮二軍監督の奮闘。
「負け慣れた」チームを変える為に。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/04/30 15:10
田口はオリックスにとって1996年に優勝した「伝説のメンバー」の一人。強いオリックスを取り戻せるか。
一軍の調子が悪いのは、二軍にとってはチャンス。
調子の悪い選手にはよくなるための手助けをし、調子がいいけれど上にあがれない選手を、それでも頑張り続けさせるために、監督は1人1人を気にかけ、こまめに声をかけ続ける。
「『必ずチャンスは来るから』と伝えたり、もう手を替え品を替え、ですね。福良(淳一)監督にも、『なんとかお願いします』という話をしながら」
開幕当初は一軍選手の調子がなかなか上がらない中、投手陣の入れ替えはあったが、野手はほとんどなかった。
「(一軍に)調子のよくない選手があれだけいたのに、ファームの方も誰も調子が上がっていない状態だった。だから一度雷を落としたんですよ。『こんだけチャンスがあんのに何してんのや! 目の色を変えてやれ!』って」
親身になるからこそ、もどかしかった。
選手達の一致した田口評は「熱い人」。
「熱い人」というのが、選手たちに共通する田口監督評だ。入団3年目の吉田雄人は言う。
「やるべきことをやらないと怒られますし、厳しいですけど、メリハリがすごくありますね」
田口監督は、「自分は切り替えがめちゃくちゃ早いんで」と笑う。
「アメリカに行ってからですね。向こうでは考えている時間がないので、どんどん切り替えていかないとやっていけなかった。試合に負けても、その後のミーティングが終わったらもう忘れています。ミーティングで反省すべきことは反省して、はいオッケーって」
選手へのアドバイスにも、メジャー経験者ならではのエッセンスが含まれている。吉田雄は、強い打球を打つためにこんなアドバイスを受けた。
「メジャーの選手って力任せに見えたり、上半身だけで打っているように見えるけど、身近で見ると、実はああいう動きも理にかなっているんだと言われました。僕はかかと体重になってしまうんですけど、メジャーの選手は打った後に、(左打者は)左足がベースを踏むぐらい前に出る。前に体重が乗っているんです」
その話を聞き、ボールに体重を乗せて飛ばすイメージで打つと、打撃練習の打球が様変わりしたと言う。